『虚魚』
2021年12月15日
あなたは肝試しをしたことはありますか?
また怪談はお好きでしょうか。
私は子どもの頃からかなりの怖がりで、
家族で旅行に行っても夜の宿の雰囲気が怖くて寝られず、
子どもの頃は母の手をずっと握り続けていました。
なぜこんなに怖がりになったのかというと、多分、テレビのせいかと。(笑)
私が子どもの頃は、テレビで怖い話をよくやっていたんですよ。
見なきゃいいのに、なぜか見てしまって
夜、なかなか寝られないなんてことを繰り返していました。
さすがに大人になった今は、怖がりも落ち着きましたが、
積極的に肝試しをしたいとは思いません。
でも、あえて怖い場所に積極的に行く人たちもいるようです。
今日ご紹介する本は、本当に人が死ぬ怪談を探し、
その怪談が本物かどうか確かめ続ける若い女性二人の物語です。
『虚魚(そらざかな)』
新名智(にいな・さとし)
株式会社KADOKAWA
新名さんは、この作品で横溝正史ミステリ&ホラー大賞の大賞を受賞しデビューしました。
この賞は、歴史ある「横溝正史ミステリ大賞」と「日本ホラー小説大賞」を
2018年に統合した新たな文学新人賞のことです。
『虚魚』は、選考委員の皆さんから絶賛され大賞受賞となったそうです。
たとえば、『闇祓』が話題の辻村深月さんは、
怪談と怪異を巡る新たな小説の形が一緒に解き放たれた、と感じた。文句なしの大賞。
と評しています。
***
『虚魚(そらざかな)』とは、どんなお話なのか、ご紹介しましょう。
20代の女性二人、三咲とカナちゃんは、ある理由から一緒に暮らしています。
実は二人の利害関係が一致しているのです。
三咲は、怪談師として活躍しており、
日本各地の「体験した人が本当に死ぬ怪談」を集めています。
両親を事故で亡くした三咲は、
幽霊や怪談、呪いや祟り、オカルトや超常現象などの情報を集めては、
その怪談で両親を事故死させた男を殺したいと思っています。
呪いや祟りなら法律を犯すことなく殺せるからと。
一方のカナちゃんは、ある理由から、呪いか祟りで死にたいと思っています。
三咲は初めてカナちゃんに会ったときに「わたしで実験してみなよ」と言われ、
二人はともに暮らし、様々な怪談を試し続けています。
ところが、どの怪談も嘘ばかりです。
そんなある日、「釣り上げた人が死んでしまう魚がいる」という噂を耳にします。
三咲は早速、その怪談を調べ始めます。
すると、同じ川の河口で似たような怪談がいくつも発生していることがわかります。
様々な噂をまとめると、
その魚は言葉を発し、その言葉を聞いたことで死んでしまうらしいことがわかります。
二人は様々な人から協力を求め、その不思議な魚を探しことにします。
果たして、その魚とは?
そして、二人の目的は達成できるのか。
(となると、カナちゃんは呪い殺されてしまうわけですが…)
どんな結末が待っているのか。
ぜひドキドキしながら本のページをめくってみてください。
***
私、怖い話は苦手なのに!
最近、ホラー系にも手を出すようになってしまいました。(笑)
そして、この本も怖いと思いながらも
結局ノンストップで最後まで読んでしまいました。
三咲とカナちゃんの二人のキャラクターが程よくドライで、
文章もテンポがいいので、ページをめくる手は止まらず、サクサク読めました。
だからと言ってサラリと読めてしまうかといったら、そういうわけでもありません。
ちゃんと怖いです。(笑)それも色んな意味で。
三咲とカナちゃんと一緒に「本物の怪談」を探している気分で
本のページをめくってみてください。
二人はいったい何を見つけるのでしょうか。