ゆきれぽ

2021年6月2日

  • #本

『リボルバー』

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ゴッホと聞くと、どんな印象をお持ちですか?

・「ひまわり」を描いた人
・日本のことが好き
・自分の耳を切った
・自ら命を絶った
・狂気と情熱の画家
・ゴーギャンと短い共同生活を送っていた

あたりを上げる方が多いでしょうか。

今日ご紹介する本は「ゴッホの死」に迫るアートミステリです。
同時にゴッホとゴーギャンの物語でもあります。

『リボルバー/原田マハ(幻冬舎)』

原田マハさんは、以前ラジオでもご紹介した
『たゆたえども沈まず』という作品でもゴッホを取り上げています。

◎私の感想は コチラ

『たゆたえども沈まず』には、ゴッホのほか、
パリで浮世絵を売っていた高岡市出身の画商
林忠正(はやし・ただまさ)が登場していたことから
富山では特によく読まれたようです。
お読みになった方もいるのでは?

ちなみに、同じゴッホの物語とは言え、
新作『リボルバー』は、『たゆたえ〜』とは異なる解釈ですので、
ゴッホの死の真相も異なります。
私は、新作は、新たな事実が明らかになったのか!という気分で楽しめました。

もちろん、どちらも原田さんが創作された「小説」なんですけどね。
でも、『リボルバー』は、これが真実なんじゃないかと思えてしまいました。

『リボルバー』は、まず現代のお話から始まります。

主人公は、パリの小さなオークション会社で働く
高遠冴(たかとお・さえ)という日本人の女性です。
パリ大学で美術史の修士号を取得し、
現在もゴッホとゴーギャンについて研究しています。

冴はいつか高額の絵画取引に携わりたいと願いながらも
小さな会社ゆえ、なかなかそんな仕事はやってきません。
そんなある日、錆びついた一丁のリボルバー(拳銃)が持ち込まれます。
それも「フィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたもの」として。

冴はそのリボルバーを見るなり、偽物だと疑います。
でも、依頼人は「証明できる」と断言。
冴はリボルバーが本物かどうか調べることになります。

そして、物語はゴッホが亡くなる前のゴッホとゴーギャンが
共同生活をしていたころへとさかのぼります。
それもゴーギャンの独白という形で。

ふたりは共同生活をしていたものの、
絵画に対する意見の不一致からゴーギャンはゴッホのもとを去ろうとします。
するとゴッホは自分の耳を切ってしまいます。
その後、ゴッホは療養しながら絵画を描きつづけますが、
結局自ら命を絶ってしまいます。

一方のゴーギャンは、ゴッホと別れた後はタヒチへと旅立ちます。

いったいゴッホとゴーギャンの間に何があったのか。
なぜゴッホは自ら命を絶ってしまったのか。
いや、もしかしたら誰かに殺されたのか。
冴はさまざまな角度から「ゴッホの死」の謎に迫っていきます。

冴がどのように謎を解いていくのかは、ぜひ本を読んで味わってください♪

『リボルバー』、スリリングで大変面白かったです!
あくまでもこの本は「小説」ですが、
これは真実なのではないかと思いながら夢中で読み進めてしまいました。

この本の一番の魅力は、人間としてのゴッホとゴーギャンが描かれていることです。
ダメなところや弱さやずるさも包み隠さずに。
そのおかげで彼らが近い存在に感じられます。

原田さんはこれまでたくさんのアート小説をお書きになっていますが、
原田さんの本を読んだ後に、作品に出てきた画家の作品を見ると、
まるでよく知る友人の絵を見ているような気分になります。

おかげで私には一方的に画家の友人が大勢います。
今はゴッホとゴーギャンが友人です。(笑)

そもそも私がアートに興味を持ったのは原田マハさんの小説がきっかけでした。
以前はどのようにアートを楽しめばいいかわからず
美術館に行っても滞在時間がかなり短かったのに、
今や美術館に行くのが趣味になっています。

ちょうど今、富山県美術館で開催中の
『ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—』で、
ゴッホとゴーギャンの作品が見られます。

私は4月に一度鑑賞していますが、この本を読んだら、また行きたくなってしまいました。
きっと前回とは見え方が違うように思うのです。

主人公の冴は、名画についてこんなことを言っています。
「名画というものは、描かれてから何年経過していようが、
さっき描き上がったかのように生生しく感じられるものだ」と。

たしかに心惹かれる作品って生きている感じがします。

原田さんには、またアートとの距離を縮めて頂きました。
今回も楽しく豊かな読書時間でした。

そうそう、読み終えたら最後に表紙を外してみてくださいね。
ある作品が隠れていますので。

ちなみに、私は『リボルバー』を読んだ後、ゴッホについてもっと知りたくなり、
『ゴッホのあしあと』という原田さんがゴッホの魅力を解説された本を新たに読み、
さらに『たゆたえども沈まず』も再読してしまいました。
おかげで今私の頭の中はゴッホでいっぱいです。(笑)

だからできればゴッホの舞台も見に行きたいんですよねー。
実はこの作品、この夏に舞台化されることが決定しています。
行定勲さんの演出で、主演はNEWSの安田章大さんです。
安田さんがゴッホを演じるそうですよ。

舞台も見たいなあ。でも無理だよなー。
配信してくれないかしら。

また、ゴッホと言えば、富山市のほとり座で、
6月12日(土)から6月18日(金)まで
『ゴッホ〜最後の手紙〜』を上映されるそうです。

こちらも小説同様、ゴッホの最期が描かれています。しかも全編動く油絵で。
こちらは見に行ける!

色々な作品を比較してみるのも楽しそうですね。