『脳から見るミュージアム』『ポーラ美術館コレクション展』
2021年4月28日
「先日、神奈川の箱根に行ってきました♪」
今の私はすっかりそんな気分です。
まあ、実際私が訪れたのは富山県美術館なのですけどね。
先週の土曜から富山県美術館では、
『ポーラ美術館コレクション展—印象派からエコール・ド・パリ—』
を開催しています。
ポーラ美術館の収蔵作品から、
モネやルノワールの印象派、
セザンヌ、ゴッホなどのポスト印象派、
マティス、ピカソといった20世紀を代表する画家たち、
そしてユトリロやシャガールなどのエコール・ド・パリに至るまで、
フランスで活動した作家の絵画と、化粧道具が展示されているという
大変豪華な展覧会です。
※一部の作品は撮影可でした。
◎企画展の詳細は コチラ
作品は時代ごとに展示されているので
各時代のトレンドや特徴がわかりやすい上、
作品の鑑賞ポイントも書かれていたため、
じっくり味わいながら鑑賞できました。
個人的には、以前、東京の美術館に企画展を見に行った
「ピエール・ボナール」や「セザンヌ」の作品は
内心興奮しながら鑑賞しておりました。
そして、これらの作品がここ富山で見られることを嬉しく思うだけでなく、
裏で大勢のスタッフの皆さんが尽力されたのよねと思ったら、
心の中で「ありがとうございます」とお礼を言わずにはいられませんでした。
そんな風に思えたのはこの本を読んだからです。
『脳から見るミュージアム アートは人を耕す(講談社現代新書)』
この本は、人気脳科学者の中野信子(なかの・のぶこ)さんと
東京藝術大学大学美術館准教授の熊澤弘(くまざわ・ひろし)さんが
ミュージアムについてお話になったものをまとめたものです。
タイトルを見ると難しそうですが、まったくそんなことはありません。
対談形式なので読みやすいですし、何より読んでいて楽しかったです。
私がこの本を選んだ理由は、本の帯に
「無数のコレクションがコロナ禍に疲れた脳に効く!」とあったからです。
とは言え、日本では「美」を感じることは不要不急のものと思われがちです。
しかし、そうではないことが、
4万〜4万4500年前のホモ・サピエンスの研究結果からわかったそうです。
絶滅したネアンデルタール人と違って、
今も生き延びているホモ・サピエンスは「美」を必要としていたのだとか。
詳しくは本を読んでいただきたいのですが、
つまり「美」は生きるために必要不可欠なものだということです。
この本では、その「美」を感じることができる場所である
ミュージアムの歴史や存在する意義のほか、
論争やワケありといったミュージアムの影の部分、
日本の面白い美術館や作品の見方、
そして、なぜアートが必要なのかなど、
様々な角度からミュージアムやアートの基礎知識が学べます。
へぇぇと思ったのは、作品の鑑賞時間に関する話題です。
なんと作品一点に7秒しかかけられていないんですって。
短いっ!
また、脳と絡めながらの話題も多く、
例えば、人間の脳は使ううちにゴミがたまるそうで、
それを寝ている時に洗い流しており、
その結果、記憶のつながりもよりよくなるそうなんです。
休館中や展示をしていないときのミュージアムも
まさに同じような作業をしているのだとか。
しかも、その見えにくいものこそ、ミュージアムの根本をなす仕事なんですって。
そもそもミュージアムには、作品を展示するだけでなく、
資料を収集し、調べ、保管するという公的な役割があるのです。
また、常設展にはその美術館の基礎的な活動が見えるので、
ぜひ見ていただきたいそうです。
といった感じで、様々な角度からミュージアムについて知ることができます。
ちなみに私が紹介したのはほんの一部です。正直、かなりディープな話もあります。
美術館に寄せられたクレームとか、ワケあり作品とか。。。
でも、私はこの本を読んだことで、美術館が身近な場所に感じられました。
一見、近寄りがたそうな高尚な雰囲気を醸し出しているものの、
実はとても人間味あふれる場所なんだなと思いました。
いや、人間臭さといったほうが合うかも。
この本を読んで私が一番印象に残ったのは、
短絡的に目減りするものより、
未来に生きる記憶としての知識を蓄積していったほうがいい。
というご意見です。
ミユージアムに行くと、知らず知らずのうちに
体の中で化学反応が起こることがあるのだとか。
すぐには変わらないかもしれないけれど、3年後、10年後には変化があるそうです。
ミュージアムに行くことで得られる知識が蓄積していくって、素敵だと思いませんか?
あなたも未来の自分のために、ミュージアムに行ってみてはいかがでしょう。