『彼女の名前は』
2020年12月9日
先月、富山で映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が公開されました。
あなたはご覧になりましたか?
私は見に行こうと思った日に、もう上映が終わっていて見られず。。。
見たかったなー。
映画『82年生まれ、キム・ジヨン』の原作は、
韓国で130万部を突破したベストセラー小説です。
現代女性の生きづらさを描いた小説として、日本でも話題になりました。
私ももちろん読みましたし、ラジオでもご紹介しました。
◎田島の本の感想は コチラ
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今日ご紹介する本は、この『82年生まれ、キム・ジヨン』を書かれた
チョ・ナムジュさんによる短編集です。
『彼女の名前は(筑摩書房)』
著者が、9歳から69歳まで60人余りの女性に取材をして書いた
28のお話が収録されています。
取材がベースになっているものの、ノンフィクションではなく小説です。
例えば…
・セクハラと戦う女性
・初めて会社で育休を取った女性
・仕事の忙しい娘の代わりに孫の面倒を見る女性
・路線バスの女性運転手
・国会の清掃職員
などの女性が登場します。
出てくる女性たちは皆、普通の女性たちです。
著者のチョ・ナムジュさんは
「特別ではない、大したことのない、そんな女性たちの人生」
を書いたそうです。
それも社会の不条理に声をあげる女性たちを丁寧に描いています。
そう、女性たちはみんな何かと戦っているのです。
セクハラと、会社と、義理の家族と…。
そして、その戦いは自分のためだけではありません。
この苦しい思いを他の誰かに味わわせたくない。
私で終わりにしなければ!という思いで戦っているのです。
女性たちが立ち上がる理由は、「次の人」のためです。
ある女性はこう言います。
私だってそうだったんだよ。
あたしたちの頃はもっとひどかったんだから。
そんなことを言う先輩にはなるまい。
ドキリとしました。
だって、私も年上の人たちからよく言われてきたし、
私自身も年下に言ったことがあったから。
反省。。。
私だって辛い思いをしたのだからあなたも我慢して。ではなく、
こんな思いは、もう他の人にはさせない。私で終わらせなければ!
と思う人が増えれば、世の中はいい方向に変わっていくのですよね。
辛い時は、なんで自分ばかりがこんな思いをしなきゃならないのよ…
と気持ちが自分に向いてしまいがちですが、
私がこの状況を変えることで後に続く人たちもきっと楽になる!
と思えば、確かに頑張れそうな気がします。
この本は韓国のお話ですので、日本とは異なる部分もあります。
日本ではそんな話は聞いたことないな、と驚くような話もあり、
私には韓国のほうがより酷い状況に感じられました。
詳しくは実際に本を読んで頂きたいのですが、
それこそ、大ヒット映画『パラサイト 半地下の家族』のような話もありました。
でも、日本でも今よりもっと女性が生きづらかった時代もあるわけで、
これまで様々な理不尽と戦ってきた女性がいるから、
今がだいぶ生きやすい時代になっているんだよな、
ということにあらためて気付かされました。
先輩方、本当にありがとうございます。
これからは、私も次に続く人たちのために、
しっかり生きていきたいと思いました。
この本の中で、40歳についてこう書かれていました。
40を過ぎたら自分の顔にも自分を取り巻く社会にも責任を持つべき。
すでに40歳をこえている私には耳の痛い言葉でした。
私、社会に責任を持てているだろうか。
そもそもひどい顔をしていないかと。
40歳を過ぎるとこれまでの生き方で顔つきが変わるのだそうです。
あなたはどんな顔をしているでしょうか。
著者のチョ・ナムジュさんは、
『82年生まれ、キム・ジヨン』によって
問題が社会に認識されたことはよかったけど、
認識だけではダメで、半歩でも前に進もうと、
そのためにこの本を書かれたそうです。
『彼女の名前は』は、多くの方に読んでいただきたい一冊です。男女問わずぜひ!