『晴れ、時々くらげを呼ぶ』
2020年7月8日
「くらげ」と聞くとどんな印象でしょうか。
いっときブームになって、水族館に見に行ったり、家で飼ったりして
くらげに癒される方たちがテレビでよく取り上げられていましたよね。
私も以前、京都水族館でくらげの水槽を見て
「たしかにこれは癒される」と、はまりかけたことがあります。(笑)
照明の効果もあったと思うのだけど、
暗闇の中でぷかぷかと漂う透き通ったくらげは
神秘的で大変美しいものでした。
そんな癒しの存在でもあるくらげですが、
海水浴シーズンの終盤には、くらげが出てくるからもう海には入れない、
なんてこともよく言われますよね。
いずれにしてもくらげは、水の中にいるものですが、
もし「くらげが空から降ってくる」と言われたら、どう思いますか?
今日ご紹介する本は、こちら。
『晴れ、時々くらげを呼ぶ/鯨井あめ(くじらい・あめ)【講談社】』
著者の鯨井さんは21歳の現役大学生です。
この本は、第14回 小説現代 長編新人賞 受賞作で
1200作品の中から選ばれた、鯨井さんのデビュー作です。
主人公は、高校2年生の亨(とおる)です。
彼は小学生の頃に父親を亡くしたあと、心を閉ざし、
何に対しても興味を持てずにいます。
そんな彼が、図書委員の後輩女子、小崎(こさき)をはじめ
友人たちと関わることで変わっていくという物語です。
2人は図書委員なので本の話も多いのですが、
本が大好きな小崎に対して、亨は本はあまり好きではありません。
本に興味が無い上、人と関わりを持つことも避けている亨は、
図書委員たちが好きな作家や作品に対して
熱く語り合っているのを冷めた目で見ています。
また、もう一つ冷めた目で見ているのが「くらげ乞い」です。
後輩女子の小崎は、毎日屋上で空に向かって
「くらげよ、降ってこい!」と叫んでいるのです。
まるで雨乞いのように。
くらげが空から降るはずなんて無いと心の中で思いながらも
亨は小崎のくらげ乞いを一応見守ります。
そんなある日、いつも元気いっぱいの小崎が泣いているのを見かけます。
でも、見かけただけで話かけることはしないのですが。
そして、想像もしていなかったことが起こります。
その後も思い通りにならないことが続き、亨はイライラし始めます。
なるべく人と深く関わらず無関心でいようと思っていたのに、
結局、様々な人と関わることになって心をかき乱されます。
さて、心に変化のあった亨はこの先、どう変わっていくのでしょうか。
続きは、ぜひ本のページをめくってみてください。
***
「くらげが空から降る」なんてことを真面目に紹介すると、
大人の皆さんからは「ああ、若い人向けのファンタジーね」
と思われてしまいそうですが、そういうふわふわした物語ではありません。
どちらかというと感情面はとても現実的です。
思春期の誰にも言えない心の悩みや葛藤、閉塞感が、
ついこの間まで10代だった著者だからこその、リアルな温度で描かれています。
また、この作品にはたくさんの実在する「本」が登場するのですが、
登場人物たちが、それぞれの作品への愛を熱く語っているのも印象的でした。
『晴れ、時々くらげを呼ぶ』は、そういった本への愛情もだけど、
著者の鯨井さんのまっすぐでピュアな思いがそのまま文章になっている、
瑞々しく純度高めの一冊でした。
本を読みながら頭に浮かぶ光景も美しかったです。
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