3『対話篇/金城一紀』
2009年1月25日
真っ白な装丁に、ただ「対話篇 金城一紀」とあり、
裏表紙の解説も読まずに買ってしまいました。
シンプルすぎてインパクトがありました。
この本に収録されていたのは、「恋愛小説」「永遠の円環」「花」の3作品。
それぞれ独立しながらも、某大学に関わりがあることと、
登場人物、皆が、孤独で「死」が身近にあることは共通していました。
人に話せない悩みを抱えている孤独な人たちが、
人と対話をすることによって、自分自身を取り戻していく・・・。
簡単に言えば、そういうことになるのですが、
そんなにキレイなものでもないんです。
どこかつかみどころか無くて、ファンタジーっぽさが垣間見えつつも、
とても現実的のようでもありました。
なぜか自分と親しくした人は皆亡くなってしまうことから、
人との関わりを絶った男子大学生の話、
自分が亡くなる前に、ある計画を実行したい男子大学生の話、
そして、別れた妻の遺品を受け取るために、車で、しかも国道のみを通って、
東京から鹿児島まで向かう弁護士の話などが収められています。
本のタイトル通り、どの話も必ず誰かと会話しています。
人が苦手とか嫌いという人でも、
きっと誰かに話を聞いてもらいたいと思っていると思うの。
人におびえ人に傷つきながらも、結局、人は人に救われているんですよね・・・。
さら〜っと読めました。
でも、読んだ時間に反比例して、長い時間旅をしていたような、
というより、長い時間夢を見ていたような、心地いい疲労感がありました。