たそがれダンサーズ
2019年11月13日
ラジオをお聞きのあなたは何か習い事はしていますか?
今日は、趣味に夢中になるおじさまたちの物語をご紹介します。
『たそがれダンサーズ/桂望実(中央公論新社)』
桂さんと言うと、映画化された『県庁の星』が有名かもしれません。
今回の登場人物は、おじさまたちです。
いや、中にはおじいさんもいます。
彼らの共通点は、社交ダンスを習っていること。
メンバーを簡単にご紹介しましょう。
まず、定年後に趣味として始めた田中さん。
退職後、運動不足を実感し、ウォーキングをしたり
卓球教室に通ったりしたものの楽しめず、
病院ですすめられたのが「社交ダンス」でした。
社交ダンスは、激しすぎず、でも簡単すぎるわけではないので飽きない。
そのうえ、男性が圧倒的に少ないから女性たちから引っ張りだこになるのだとか。
田中さんは、男性が少ないなら人助けにもなるし、
ついでに運動もできるなら、という理由で始めることにします。
また、商社マンの川端さんは、女性にモテたいという理由で。
工場経営者の大塚さんは、家族には秘密のままこっそり始めます。
もちろん、全員社交ダンスは初めての素人たちです。
実際、社交ダンスをする男性たちは少ないようで、
ダンスパーティーに参加すれば、実際女性たちから
「私と踊ってください」と次々に誘われます。
おじさんになってから、こんなに女性たちからモテるのは初めてで
戸惑うおじさんもいれば、喜ぶおじさんもいます。
また、女性の先生方はみんな優しくて、
失敗しても全く怒られません。
そんな日々が続き、おじさまたちは幸せいっぱい♪
かと思いきや、いや、これは何か違うと気付き始めます。
おじさまたちが若いころ、スポーツと言えば厳しい指導が当たり前でした。
猫なで声で優しく指導されるより、クールにダメ出しされるほうがいいかも、
と思い始めます。
また、最初は女性から必要とされることに喜びを感じていたものの、
段々それに疲れを感じ始めます。
女性の目など気にせず、男性だけで踊りたいと思った彼らが始めたのは、
社交ダンスの「フォーメーション」という種目でした。
社交ダンスというと、私は男女ペアになって踊るイメージで、
団体で行うダンスがあるなんて知りませんでした。
そして、おじさまたちは、男性だけのダンスを始めることにします…。
果たしておじさまたちのダンスは、どこに向かってくのでしょうか。
ぜひこの続きは、本のページをめくってみてください。
***
大変面白かったです!
若者たちが何かに向かって頑張る物語はよくあるし、
私も好きでよく読みますが、
この小説は頑張るおじさまたちの物語です。
最初は、このおじさん偉そうだなとか、
なんでこんなに自己評価が高いんだろう?とか
そんなに自分のプライドが大事なの?
と正直、出てくるおじさまたちに対して、いい印象はありませんでした。
でも、読み進めるうちに、おじさまたちに私が慣れてきたのもあると思いますが、
悪い印象ではなくなっていきました。
そして、後半は涙、涙でした。
若者の物語は、それまでどんなにつまずいていたとしても
未来に期待を感じさせるものが多いですが、
おじさまたちの場合、もう人生の半分以上が過ぎてしまっています。
登場人物のおじさまのひとり、62才の田中さんは、
「皆、したくない体験をしてきた。
望み通りの人生だと胸を張って言える人は一人もいない」
とおっしゃっています。
そうなんです。
長く生きていれば、みんな、それぞれ何かしら辛い経験があるのですよね。
今年も残り1ヶ月半です。
今年を振り返ると特に印象的なことはなかったなあ、
というおじさま、おばさまたちはいませんか?
この本を読んだ後は、きっと何か新しいことをはじめたくなると思います!
中には「社交ダンス」を始める人もいるかも!?
また、この本は中高年だけのものではありません。
若者の皆さんにもおすすめです。
プライドが高くて偉そうなおじさまたちから教わることもあると思いますよー。
ぜひおじさまたちの心の中をのぞいてみてください。