落日
2019年10月9日
今日のキノコレ(grace13時45分ごろ〜)は、
紀伊國屋書店富山店の奥野さんから
今話題の本、湊かなえさんの『落日』をご紹介いただきます。
◎奥野さんの推薦文は コチラ
本の帯には、「湊さんの新たなる代表作で、今年最高の衝撃&感動作」とあります。
湊かなえさんというと「イヤミスの女王」としておなじみです。
イヤミスとは、読んだ後に後味の悪さを感じる、
嫌な気分になるミステリーのことです。
それなら読まなきゃいいのに!と思いますが、
それでも読みたくなってしまう魅力があるのですよね。
私もこれまで湊さんのイヤミスは色々読みました。
でも、今回の作品は読んでいる最中は「イヤミス」っぽさを感じつつも、
読後感の後味は決して悪くありませんでした。
ですので、イヤミスが苦手な方にもオススメです。
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『落日』は、ある事件をベースに映画を撮りたい、という新進気鋭の映画監督から
新作の相談を受けた新人脚本家が、事件の真相に迫っていくという物語です。
監督が撮りたいのは、『笹塚町一家殺害事件』。
この事件は、引きこもりの男性が高校生の妹を自宅で刺殺後、
放火して両親も殺してしまったというもので、
15年前に起き、判決も確定しています。
実は、事件の起きた笹塚町は、脚本家の生まれ故郷でした。
そして、監督も事件と全く無関係ではありませんでした。
ちなみに、脚本家も監督も女性です。
脚本家は、いとこから
「主人公が全部同じ人間に見えてしまうワンパターンな作品しか書けない。
自分の見たい世界だけ書いてんじゃねえよ」
と言われてしまうほどで、脚本家として成功しているわけではありません。
だから人気監督から声がかかったことをうれしく思い、今回は成功させたいと思います。
でも、同じ事件を追っていても、監督との感覚の違いを実感してしまいます。
例えば、同じものを見ていても、脚本家は「見たい」だけで、監督は「知りたい」と思っている。
監督は表面的に見るだけではなく、ちゃんと意味を知りたいと思うのですね。
そして、少しずつ事件の真相がわかっていきます。
合わせて二人の過去も明らかになり…。
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湊さんの作品を読んで、最後に感動で目頭が熱くなったのは初めてかもしれません。
もちろん嫌な人も出てくるのだけど、
後味の悪さだけが残るような作品ではありませんでした。
いい作品でした。
『落日』もいつか映像化されそうだなー。
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そういえば、ストーリーとは関係ないのですが、
監督が子どもの頃、父から言われた言葉に共感しました。
「映画館を出たと同時に感想を言い出すのはダメ。
自分は面白くなかったと思っても、
隣で感動している人がいるかもしれないから」
そうなんですよ!これ、私もいつも思っています。
感動したときは「よかった!」と言ってもいいと思うけれど、
否定的なことを言うのは後でにして!と。
この作品、ストーリーの面白さに加えて、
登場人物たちの会話から「なるほどな」という気付きもあり、
そういう意味でも楽しめました。