罪の轍
2019年9月11日
今日ご紹介する本は、東京オリンピックを翌年に控えた頃のお話です。
といっても今年ではなく、昭和38年の物語です。
『罪の轍/奥田英朗(新潮社)』
物語はまず、北海道から始まります。
漁師手伝いの青年、宇野は、盗みをはたらき東京へ逃亡します。
そして舞台は東京へ。
彼が東京で暮らし始めてからまもなく、ある強盗殺人事件が起きます。
事件の捜査を担当しているのは、捜査一課の落合。若手の刑事です。
落合は、殺人事件の犯人を追っていく中で、ある青年の噂を耳にします。
そんな中、今度は男児誘拐事件が発生します。
落合をはじめ刑事たちは、男の子を一刻も早く見つけ出さなければ!と思うものの、
手がかりはなく、時ばかりが過ぎていきます。
本のページをめくるだけで心臓がバクバクするほどの緊迫感です。
無事、男の子を見つけることはできるのか?
また、二つの事件の犯人はそれぞれ誰なのか?
そして、物語はこのままどこに向かっていくのか?
など、本のページをめくるたびに疑問が次々にわいていきました。
これらの答えが知りたい方は、ぜひ本をゲットしてください。
ただ、600ページ近くもある長編ですので、お時間のある時にお読みください。
ちょうど今週末と来週末は3連休ですから一気読みするのにいいかも!
また、この物語を読んだ後に、
奥田さんの過去の作品『オリンピックの身代金』
も合わせてお読みになってみてはいかがでしょう?
実は、刑事たちが今回の物語と同じメンバーなのです。
時代的に見ると、『罪の轍』が先です。
私も『オリンピックの身代金』も読みましたが、
10年前のことでだいぶ忘れているため、もう一度改めて読んでみたくなりました。
◎『オリンピックの身代金』の私の感想は コチラ
とは言え、『オリンピック〜』のほうもかなりの長編ですので、
一気に読もうと思ったら、3連休は読書しかできなくなりそうですが。
まあ、それも素敵な過ごし方かな!(笑)
***
『罪の轍』は、東京オリンピックを翌年に控えた昭和38年の物語なのですが、
私はあまり古さを感じませんでした。
というのも、人の心や行動が今も昔も変わらないように感じたのです。
今、世の中で何か事件が起きたとき、
ネットに様々な情報がさらされてしまいますよね?
ネットが登場する前はそんなことは無かったのに、嫌な時代になったものだわ。
と思う方もいるかもしれません。
でも…昔も同じことをする人はいたのです。
たとえば、子どもが誘拐された家で、どんなことが起きたと思いますか?
なんと、電話が鳴り続けたのです。
嫌がらせの電話が!
電話の匿名性をいいことに、日頃のうっぷんを晴らすべく、
いたずら電話をかける人が大勢いたのでした。
時代は変わっても人の行動は変わらないじゃないか、とハッとさせられました。
***
それから、『罪の轍』には、富山の皆さんにしかわからない話題が出てきます!
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、
ほかの地域の皆さんが「ん?どういうこと?」となる中、
きっと優越感に浸れると思います。(笑)
奥田ファンの一人として、富山の話題を出してくださったことが嬉しかったです。
そう、私は奥田英朗さんの作品が昔から大好きです。
奥田さんの作品には、犯罪を犯す人がよく出てくるのですが、
100%悪人としては描かれません。
だから厄介なんです!(笑)
時代劇に出てくる悪人のように、とことん嫌な奴だったら
「この人むかつくー!」ちお怒りをぶつければいいだけので、そういう意味では楽なのですが、
奥田さんは、そんな単純な描き方はしません。
人のいい面も悪い面も平等に描いていきます。
だから、どんな人からも人間らしさを感じます。
100%完璧な人もいなければ、100%悪人もいません。
そのバランスが絶妙なのです。
奥田さんの本を読んだ後は、
自分の周りにいる、ちょっと苦手な人に対しても
この人にもいい面はきっとある、と
いつもより優しい気持ちで接することができるような気がします。
今回も充実の読書時間でした。
(そして、寝不足になりました!笑)
***
ただいま紀伊國屋書店富山店では、
「ユキコレ・キノコレ フェア」が開催されています。
このフェアは、graceで毎週水曜日の13時45分頃〜お届けしている
本の紹介コーナーでご紹介した本を集めたものです。
これまで紹介してきた本の中から
紀伊國屋書店富山店と私、田島が選んだ本が並んでいます。
私のオススメ本には私のコメントもありますので、
良かったらお読みください。
フェアは9月30日(火)までですので、
ぜひ足をお運びください♪