ふたご
2017年11月8日
藤崎彩織(ふじさき・さおり)さんという作家さんをご存知ですか?
初めて聞く名前だなあ、という方もいらっしゃるかもしれません。
実はいま、彼女の初の小説が大人気なのだとか。
先日、紀伊國屋書店富山店に行ったとき、
書店員さんも「よく売れています」とおっしゃっていました。
もうひとつ質問です。
SEKAI NO OWARIはご存知ですか?
セカオワなら知っている!という方も多いのでは?
そうです。あの、ピエロが印象的な人気バンドです。
藤崎彩織さんは、セカオワでピアノ演奏とライブ演出を担当している
バンドの紅一点のSaoriさんのことです。
今日ご紹介するのは、
彼女が5年間かけて書いた小説 『ふたご(文藝春秋)』 です。
私は本に対する知識を入れないまま読み始めたのですが、
すぐに、これは、セカオワのボーカルのFukaseさんとSaoriさんの物語なのかも、と思いました。
実際のところは、事実をそのまま書いているのではなく、
セカオワ誕生の出来事がベースになった「小説」なんだそうです。
たしかに登場人物の名前は違います。
と言いつつも、限りなくセカオワの物語なのだと思いますが。
***
簡単にストーリーをご紹介しましょう。
主人公は、ピアノだけが友達の孤独な中学生の夏子、なっちゃんです。
そんなひとりぼっちの夏子にできた友達が、
不良っぽく見えるけれども人一倍感受性の強い
月島という、ひとつ年上の男性です。
彼は自分たちのことを「ふたごのようだと思っている」と言います。
そして、いつも滅茶苦茶な行動で夏子を困らせています。
夏子は彼に振り回されて頭にきつつも、彼のことが好きなんですね。
結局、誘われるまま彼のバンドに入ることになります。
そして、まずはバンドをする場所を作ろう!と、
ある地下の部屋を借りて自分たちでライブハウスを作ることになります…。
***
恋愛にバンドという言葉が並ぶと爽やかな青春物語のようですが、
決してハッピーなことばかりではありません。
夏子は彼のせいで、ずっと葛藤しています。
小説には、そんな彼女の心のうちが包み隠さず表現されています。
不器用な彼女の気持ちがよくわかる!
という女性の読者、結構いるような気がするなあ。
ちなみに私もそんな一人です。
たぶん、かわいげが足りないのだと思います。なっちゃんも私も。(笑)
先日もある知人の男性から、
女性には「姫タイプ」もいれば「武士タイプ」もいるけど
田島は間違いなく「武士タイプ」だね、と言われ、
確かにそうだなと納得しつつも
できれば「姫」になりたかったなー。
なぜ私は「姫」になれなかったんだ!
何が違うんだ?
なんてことを思ったばかりだったのですが(笑)、
この主人公の夏子も間違いなく
本当は「姫」になりたい「武士タイプ」だと思いました。
『ふたご』には、そんな彼女の不器用な恋愛の他、
バンド誕生の過程も描かれています。
バンドがどのようにできていくのかも興味深く読めました。
この本は、10代、20代の皆さんだけでなく、
最近、「今どきの若者は…」ということを言い始めた方にこそ
読んでいただきたい1冊かも。
自分にもこんな時代があったな、
と思い出してみるのも悪くないと思います。
私もたくさん懐かしい感情が蘇ってきました。
そして思い出しました。
私もなっちゃんのように、ずっと悩んでいたなあって。(笑)
懐かしいひりひりとした痛みを感じました。
そうそう。
この本、終わり方がいいんです!
どういいのかは、ぜひ読んで感じていただきたいのですが、
私は、本を閉じた瞬間、私の瞳は20代のあの頃と同じ輝きを放っていたと思います。