『明治乙女物語』『ワンダーウーマン』
2017年8月30日
今日ご紹介する本は、
『明治乙女物語/滝沢志郎(文藝春秋)』
です。
2017年度の松本清張賞受賞作なのですが、
選考会では、選考委員であるプロの作家さんたちが絶賛したのだとか。
ちなみに選考委員は、
石田衣良さん、角田光代さん、葉室麟さん、三浦しをんさん、中島京子さん
といったそうそうたる顔ぶれ!
選考委員のコメントは、小説の帯にのっていますので、
ぜひチェックしてみて下さい。
***
『明治乙女物語』は、
本のタイトル通り、明治時代の乙女たちの物語です。
時代は、欧化の波が押し寄せていた鹿鳴館時代と呼ばれる頃。
主人公は、東京の高等師範学校女子部に通う2人の女生徒です。
彼女たちは、教育者になるべく真摯に勉学に励んでいます。
しかし、この時代、そんな彼女たちに対して
「女が学問なんて」と白い目で見る人たちも少なくありませんでした。
当時の女性たちには、三従の訓(さんじゅうのおしえ)というものがありました。
「家にありては父に従い、嫁(か)しては夫に従い、老いては子に従う」
ことが正しいと当時は言われていたのですね。
そんな時代に「それは違う!あなた方は胸を張りましょう」と
彼女たちを鼓舞した人物がいます。
当時の文部大臣の森有礼(もり・ありのり)です。
その森から彼女たちは、鹿鳴館での舞踏会に招かれます。
めでたいことのように思いますが、
日本をはじめ各国の大使など要人があつまる鹿鳴館は
暴徒たちにとって格好の標的であり
実際、鹿鳴館を襲うという糾弾状も出るほどでした。
それでも彼女たちに舞踏会に行かない
という選択肢はありませんでした。
行かざるをえなかったのです。
でも、賢い彼女たちです。
決して権力に屈することはありません。
常に自分の心に正直であり
何が正しくて何が間違っているのかをしっかりと理解しています。
若いからとか女性だから未熟であるなんてことはありません。
彼女たちなりの戦いをします。
***
本当に面白かったです!!
そしてこの物語は、明治時代のお話ですが、
現代に通じる部分も多々ありました。
また、今も昔も変わらない嫉妬といった感情も包み隠さず描かれ、
人間らしさも感じられました。
特に主人公二人の友情の描き方が最高です。
他にもさまざまな女性たちが登場しますが、
どの女性も皆それぞれに魅力があり共感できました。
理不尽に負けそうな女性の皆さん、是非読んでみて下さい!
本を読んだあとは、
私も負けていられないわっ!
とむくむくとやる気が湧いてくるのではないかしら?
また、この物語はフィクションですが
実在の人物もたくさん登場するのも面白い理由のひとつです。
森有礼のほか伊藤博文や唐人お吉、大山捨松などが物語を彩ります。
とにかく面白い一冊でした。
***
話はちょっと変わりますが、
先日公開された話題の映画『ワンダーウーマン』を見たときに、
『明治乙女物語』と重なるところがあるなあと思いました。
もうご覧になりましたか?
今日本でも大ヒットしているそうですね。
『ワンダーウーマン』は、史上最強の女性戦士の物語で、
主役を演じるガル・ガドットが大変美しい!
★ 映画『ワンダーウーマン』の公式サイトは コチラ
もちろん乙女たちはワンダーウーマンのように
実際に戦場で戦士として戦うわけではありませんが、
でも、純粋で基本的に優しいことや
精神的な強さがあること、その一方で可愛らしさもあること
などが共通しています。
戦う強い女性というと、
「私についてきなっ!」というような
姉御肌の女性を思い浮かべそうですが、
乙女もワンダーウーマンもそうではありません。
強いけれど、男性になろうとしているわけではないですし、
女性であることを利用するわけでもありません。
ひとりの人間として、自分が正しいと思うことをしているのです。
心に嘘をつかず。
そして、自ら行動していきます。
誰かがやってくれたらいいのにと人任せにするのではなく、自分でやる。
と、偶然、同じ時期に味わった作品が戦う女性のヒロインものだったのですが、
どちらも重なるところがありました。
それからもうひとつ。
どちらの作品もヒロインのそばには男性がいるのですが、
男性の雰囲気も似ているところがありました。
優しくて強い。その上、イケメン。(笑)
『ワンダーウーマン』も大変面白かったです。
もしよろしければ、どちらの作品もお楽しみください。