スウィングしなけりゃ意味がない
2017年4月12日
昨日、本屋大賞が発表されました。
大賞に選ばれたのは、
直木賞受賞作でもある恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』。
納得の大賞です。おめでとうございます!
★ 私の感想は コチラ
この本、まだお読みでない方は是非〜。
● 本屋大賞のサイトは コチラ
今日のユキコレ(grace内コーナー13:45頃オンエアー)で
ご紹介する本も音楽に関する本です。
『スウィングしなけりゃ意味がない/佐藤亜紀(角川書店)』
本のタイトルを見た瞬間、
「お、これはジャズに関する小説かしら?」
と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
正解です!
戦時下のドイツでジャズに夢中になった少年たちの物語です。
と言っても『蜜蜂と遠雷』のように演奏したり歌ったりするのではなく
(中には演奏をする少年もいますが)、
基本的にはジャズを「聞いて」楽しんでいました。
でも、当時のドイツはナチスの政権下にあり、ジャズは敵性音楽でした。
つまり、聞くことが禁止されていたのです。
にも関わらず、彼らはジャズを聞いていました。
例えば、ジャズが楽しめるカフェで。
それもバンドの生演奏を。
物語はひとりの少年の一人喋りで進んでいきます。
少年は15歳のエディ。
彼は裕福な家庭の息子です。
いい服を着て、いいものを食べて、いい音楽を聞いて…と
まるで戦時中であることを忘れてしまいそうになるほど、
優雅な日々を送っています。
とは言え、やはり戦時中です。楽しいだけの日々は続きません。
戦争が進むにつれ、彼の環境も大きく変わっていきます。
でも、彼自身は変わりませんが。
彼の感覚は、いたって真っ当です。
長い物には巻かれません。
たとえば、こんなふうに。
「禁止された音楽だとしても
ホールいっぱいのお客さんが望むものを国は邪魔できない」
エディの本音、最高です!
この本には、そんなエディの心の声がたくさん出てきます。
しかも今どきの若者言葉で。もちろん日本語ですよ。(笑)
そういえば、この本、どことなく翻訳小説っぽいかも。
戦時中は特に誰もが上に従わざるを得ませんでしたが、エディは違います。
いや、戦時中だけのことではないな。
大人というものは、いつの時代もおかしさを疑わず、
こういうものだ、とあきらめてしまいがちなのかも。
私もエディから見たらつまらない大人になっているのかもと、どきり。
反省しました。
それにしても、この作品、ずっと音が鳴っていて
なんとも賑やかな一冊でした。
エディが好きなジャズのナンバーが次々に出てくるのです。
しかもおなじみのナンバーばかり。
ジャズ好きの方は脳内で音を鳴らしながら読書を楽しめると思います♪
音楽小説を読むたびに言っていることだけど、
この本専用のCDがあればいいのになあ。
もちろん、ジャズがわからなくても楽しめますので安心してお読みください。