明るい夜に出かけて
2016年10月26日
「コンビニが舞台の小説は?」
と質問したら本を読んでいない人でも
『コンビニ人間』
とお答えになるのでは?
この夏、芥川賞を受賞した村田沙耶香さんの『コンビニ人間』は、
大変話題になりましたものね。
今回ご紹介する本もコンビニが舞台です。
『コンビニ人間』もよかったけれど、こちらもいいです!すんごくいいです!
『明るい夜に出かけて/佐藤多佳子(新潮社)』
『コンビニ人間』はコンビニでの仕事がメインでしたが、
こちらは、主人公がコンビニで働いているのは同じですが
メインのお話は「ラジオ」です。
本の表紙も実際のラジオのブースです!
主人公は富山(「とやま」ではなく「とみやま」です)。
男性です。
わけあって大学を一年休学。
実家を出てコンビニでアルバイトをしながら生活しています。
一年限定で何が変わるかわからないけど、
一度今いる場所から脱出して
全く違う世界で、やれることをやりたいと思い
一人暮らしを始めます。
そんな彼は大のラジオ好きです。と言ってもAMの深夜ラジオ限定ですが。
今はもっぱらラジオは聞くだけですが
過去にはメッセージを送っていたこともあります。
それも某番組内では有名なリスナーさんだったようです。
ところが、あることをきっかけにメッセージを送るのをやめてしまいます。
一人暮らしを始めてからの彼の生活は、
深夜はコンビニでアルバイトをして
帰宅後、録音したラジオを聞いて
昼間は寝て
という決まったサイクルでしたが、
某ラジオリスナーと出会ったことから
生活にも彼自身にも変化が生じます。
いったいどんな変化なのでしょうか?
この先は、本を読んで楽しんでね!
***
著者である佐藤多佳子さんは、
筋金入りのラジオのヘビーリスナーなんだとか。
主人公の富山(とみやま)が何度もラジオについての愛を語っているのですが、
たぶんそれは佐藤さん自身の気持ちなんだと思います。
お話も具体的で付焼刃で書いたわけではないことがよくわかりますもの。
ラジオについての描写ではニヤニヤが止まりませんでした。
この本、ラジオを愛する方たちはきっと共感の連続だと思います。
私も「わかるー!」と何度声を出したことか。
いくつか挙げますね。
*ラジオはリアルタイムな文化
昔の人気番組は伝説だとわかっていても、自分は今のラジオを聞きたい。
鮮度が大切。生放送はやはり生で聞くのが一番。
*パーソナリティーと同じ空間にいるような錯覚
イヤホンつけてラジオを聞いていると
同じ部屋にパーソナリティがいるような近さを感じる。
この距離感はテレビでは味わえない。
*ラジオだからってだらなしない格好をしていると、声もだらしなくなりそう
などあげていったらキリがないので
この辺でやめておきますが、
たくさんの愛あふれる「ラジオあるある」と出合えます。
ちなみに、この本には実在した番組がそのまま登場します。
「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」
です。
私はこの番組を聞いたことはなかったのですが、
本を読んでいるだけでもラジオの雰囲気はよく伝わってきます。
というか、聞こえてきます。
私、田島が喋っているラジオはFMのそれも昼の番組ですので、
同じラジオと言ってもAMの深夜ラジオとは全くタイプは異なりますが、
根本は同じ。通じるところもたくさんありました。
ラジオが好きなリスナーの皆さん、
是非、本のラジオも聴いてみて下さい!
それから、この本は主人公の自分探しの物語でもありますので、
今同じような状況にある人は主人公から解決のヒントをもらえるかも。
本当にいいことを言っています。
例えば、自分の居場所ってどこだろう?
と考えたときのシンプルな答えなど。
明日から読書週間が始まります。
何か本をお探しの方は、まずは、この本から読み始めてみては?
★ 読書週間の詳細は コチラ