残り者
2016年8月31日
今日のユキコレ(grace内13時45分ごろオンエアー)でご紹介するのは、
2014年に『恋歌(れんか)』で直木賞を受賞した朝井まかてさんの小説です。
その名も『残り者(双葉社)』。
◎ 『恋歌』の私の感想は コチラ
本の表紙を外して平らにしてみると、
5人の女性+猫1匹と出会えます。
『残り者』は、そんな彼女たちの物語です。
時は幕末。
徳川家に江戸城の明け渡しが命じられます。
天璋院篤姫もいよいよ大奥を立ち退くことに。
女中たちを集め「ゆるゆると、急げ」と声をかけ、
女中たちも次々に大奥を出ていきます。
そんな中、大奥を出られずにいた「残り者」の女たちが五人がいました。
一人は、天璋院の呉服之間に奉公する「りつ」。
天璋院の御召し物を縫い上げる仕事をしています。
りつは御針仕事が好きでした。
実力もあり、天璋院に褒められこともあります。
大奥を出ることに対し納得できないと思いつつ、
皆と同じように城を出るつもりでいたりつでしたが、
ふと、御針の始末をちゃんとしたか気になり、仕事部屋へと戻ります。
ひとり大奥に残ったりつが現実を受け入れられずにいると、
誰もいないはずの大奥で一人の女性と出会います。
その女性は、天璋院の飼い猫を探しているのだと言います。
猫は本当にいるのか疑いながらも、りつは彼女と猫探しを始めます。
と結局あこれこれ言い訳をしながら城に残った女性は五人。
仕事の内容は違えど、皆、大奥勤めの女たちです。
しかも顔や名前は知っていても直接交流がありませんでした。
最初は嫌味を言ったり素直になれなかったりした五人も
一夜を共に過ごすうちに次第に打ち解けていきます。
とはいえ、まもなく官軍がやってくる大奥に
このままいるわけにはいきません。
そこで五人は思いがけない行動をおこします。
さて、残り者たち五人の運命は?
そもそも彼女たちはなぜ大奥にとどまったのか。
この続きは、是非本を読んでね!
***
大奥の物語と言うと、
将軍の世継ぎを産まなければならない女たちの物語が
頭に浮かんでしまいがちですが、
この物語は、女中たちの物語です。
主(あるじ)は将軍ではなく、天璋院篤姫。
篤姫のために彼女たちは働いてきたのでした。
自分の仕事に誇りをもち。
女たちが働きお金を稼ぐことの厳しい時代に
大奥ではたくさんの女性たちが
それぞれの強みをいかして働いていました。
『残り者』は、幕末の女たちの物語ですが、
現代にも通じるところがあります。
私は本を読みながら、すっかり「残り者」のメンバーの一人の気分でした。
最初は、独特な江戸の言葉にてこずりましたが、
なれてしまうと、その言葉づかいが美しく心地よく感じられました。
たとえば「うきうきする」は「浮き浮きする」という感じなのですよ。
同じ言葉でも漢字が使われるだけで、なんとたおやかになることでしょう。
この物語の登場人物は、ほぼこの五人の女性たちのみなので、
舞台になっても面白いかも、と思いました。
五人ともキャラが濃いし、きっと面白いと思うわ。
舞台化されたら絶対に見に行きます!
予想では二年後あたりに舞台化していそうだな。(笑)