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マチネの終わりに

2016年6月29日

若いころは、恋愛は若い人たちだけのもの、
と思っているようなところがありましたが、
年を重ねるに連れ、
そんなこともないなと思うようになりました。

そもそも恋愛に年齢制限は無いのですよね。

そして、この恋愛というものは、
何歳だろうが、
うまくいくこともあれば、
どう頑張ってもうまくいかないこともあります。

恋をしたら必ず幸せになれるかといったら、そんなこともなく。

厄介なことに、いつもは冷静な大の大人が
恋に振り回されてしまったりもします。

***

今日ご紹介する本は、恋に落ちてしまった大人二人の物語、

芥川賞作家、平野啓一郎さんの新作

『マチネの終わりに(毎日新聞出版)』

です。

この本は毎日新聞に連載されている当時から話題になっていたそうで、
連載終了後、「マチネロス」が続出したのだとか。

実際、著者の平野さんは、
「ページをめくる手が止まらない」小説ではなく、
「ページをめくりたいけどめくりたくない、
 ずっとその世界に浸りきっていたい」小説にしたかったのだそうです。

本の帯にはこうありました。

「何かとくたびれる世の中で、日常を忘れ
 没頭できる小説が書きたかった」

と。

確かに没頭しました。
そして、今や私もマチネロス…。

***

『マチネの終わりに』は、どんな小説なのか、簡単にご紹介しましょう。

一言でいうなら、アラフォーの恋愛小説です。

天才クラシックギタリストの38歳の男性と
海外の通信社の記者である40歳の女性の
二人の恋愛を軸に物語は進んでいきます。

私は、二人が初めて顔を合わせた日の描写が好きです。

会話をすればするほど、
お互いもっと話をしたい、一緒にいたいと思うのだけど、
どこか遠慮のある距離感がじれったいのなんのって。

探り合いながらもなかなか近づけない二人の物語に
私はすっかり夢中でした。

『マチネの終わりに』は、どちらか一方ではなく、
男女いずれの側からも描かれているので、
公平な目で二人の恋愛をのぞくことができます。

読者である私は、お互いを知る共通の友人のような気分でした。

途中、二人の間にすれ違いが生じたときには、
本の世界に入り込んで、お節介おばさんのごとく
本当のことを教えてあげたくなったほどです。(笑)

また、この物語は恋愛小説ではありますが、
恋愛だけのお話ではありません。

登場人物の抱える問題や社会問題など様々な問題が出てきます。

たとえば、主人公の女性は、独身で仕事もバリバリしていますが、
40歳という年齢を考え、近いうちにこどもが欲しいと思っています。

一方の男性も天才ギタリストと言われながらも実はスランプに陥っており、
それを誰にも言えずにいます。

私自身が彼らと同世代ということもあり、他人事とは思えませんでした。

彼らが様々な問題に対して悩み、答えを出すたびに、
私だったらどうするかなと常に自分と重ねていました。

そして。

ラストは私の目も赤くなっていました。

って、あまり書いてしまうとネタバレになってしまいますので、我慢、我慢。

この本は、なるべくまっさらな状態で読んでいただきたいので、
そろそろやめておきます。

ああ、毎回思うけれど、本の紹介って難しいわー!

そうそう、主人公の男性がギタリストということもあり
音楽もたくさん出てきますので、
音楽好きの方も楽しめると思います。

また、文章そのものが心地いい音楽のようでもあります。

ただ、この作品、一つだけ心残りが。

主人公のギタリストの演奏が聞けないこと!

『マチネの終わりに』のCDがリリースされればいいのにな。

yukikotajima 11:57 am