ペンギンのバタフライ
2016年2月24日
今日ご紹介する本はこちら。
『ペンギンのバタフライ/中山智幸(なかやま・ともゆき)(PHP研究所)』
タイトルにバタフライとありますが、
バタフライ効果という言葉を聞いたことはありますか?
バタフライ効果とは、ほんのわずかな差が大きな違いを生むことをいいます。
チョウが羽を動かすだけで遠くの気象が変化するという現象からきているのだとか。
『ペンギンのバタフライ』は、5つの物語が収録された短編集なのですが、
本の帯に「あなたの小さな決断がどこかの誰かを幸せにする」とあります。
まさにバタフライ効果です。
『ペンギンのバタフライ』は、どのお話もちょっと不思議な物語です。
例えば、この物語の中ではこんなことが起こります。
ある坂道を自転車で逆走すると時間を遡ることができたり、
突然「きみの生まれ変わり」と名乗る老人が目の前にあらわれたり、
2年後からメールが送られてきたり、
他人の未来が見えてしまったりします。
どうですか?不思議ですよね。
でも、全然、唐突感が無いのです。
そもそも坂道を自転車で逆走したら過去にタイムスリップできるだなんて、
普通なら絶対にありえないことなのですが、
この本は自然に受け入れられます。
多分、その理由は人の心の動きがとてもリアルだからだと思います。
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5つの作品の中で私が好きなのは、知らない老人から
突然「きみの生まれ変わり」だと言われたアラサーの女性の物語。
まだ自分は生きているのにもかかわらず。
それも自分よりだいぶ年上の男性から。
最初はナンパか?と相手にしていなかったものの、
彼女しか知りえないことを知っていることから、
本物かもしれないと思うようになります。
どうやら老人はある理由があって彼女に会いにやってきたようなのです。
その理由とは?
この続きは、ぜひ本を読んでみてね♪
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この『ペンギンのバタフライ』は短編集ですが、
それぞれのお話がゆるやかにつながっています。
さらっと読んだ箇所が実は大きな意味を持っていたり、
一度登場した人物が別のお話では脇役で登場したりします。
ですから本を読んでいる途中に前の話をもう一度読みたくなります。
私も何度も戻りつつ、
すべてを読み終えてからまた最初から読んでしまいました。
たいていの本は1度読んで終わりということが多いかもしれないけれど、
この本は、多分、読み終えた瞬間、再読したくなると思います。
また、ドキッとするような表現にたくさん出合えたのもよかったです。
ソフトダメだしのような感じの。(笑)
直接言われたら嫌だけど、
小説の中で出合うと客観的な分、素直に聞けるもので、納得できます。
例えば…
「手持ちのものばかりでどうにかしようとしている」
という一文。
私は今ちょっと悩んでいることがあったのですが、
このくすぶりは、そういうことか!といい気付きになりました。(笑)
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『ペンギンのバタフライ』は、
お話も面白くて読みやすく再読の楽しみもある上、
素敵な表現とも出合えるという、色々な意味でお得な1冊です。
あなたもぜひ読んでみてね♪