薄情
2016年1月27日
今このブログをお読みの方は地元にお住まいですか?
それとも出身地は別でしょうか。
生まれてからずっと同じ土地で暮らしている方は、
県外で暮らしてみたいと思ったことはありますか?
そもそも地元は好きですか?
富山の方の場合は、去年の北陸新幹線の開業を機に
富山のことを考えたという方もいらっしゃるのでは?
富山関連の本もたくさん出ましたし、
テレビやラジオなどでもよく話題になりましたから、
嫌でも意識せざるを得なかったというのはあるかもしれません。
私の場合は、県外出身の富山在住者として意見を求められることがよくありました。
その度に富山や群馬について色々考えをめぐらせたものです。
そろそろ富山暮らしも丸15年が経とうとしていますので、
最近では富山が地元のようになってきているなあと思いましたが、
いやいや、やはり私は群馬の人だと、ある本を読んで実感しました。
その本とは、群馬在住の 絲山秋子さんの最新小説『薄情(新潮社)』 です。
絲山さんは東京出身ですが群馬がお好きで群馬に住んで執筆なさっています。
群馬生まれの私よりよっぽど群馬のことをご存知ですし、愛があります。
そんな絲山さんの群馬愛あふれる小説が『薄情』です。
舞台は群馬です。
小説には、群馬の景色や群馬弁がたくさん登場します。
よく群馬弁ってどういうの?と聞かれるのですが、
そのたびに、いやあまりないなあと答えていましたが…すみません。
群馬弁、たくさんありました。
登場人物たちの群馬弁の会話が
頭の中で自然なイントネーションで流れるように進んでいって
私の根っこにあるのは群馬なんだと感じました。
群馬のことを全然知らないって思っていたけど、
忘れていただけだったんだなって。
絲山さんのおかげで思い出せました。
ありがとうございます。
おっとここまでこのブログを読んできて、
え、そんなに群馬弁満載の小説なら意味わからないかも…と思ったあなた!
大丈夫です。きっとなんとなくわかるはずですから。
試しに番組ディレクターにクイズ形式で出してみましたが、正解率は高かったです。(笑)
この本の主人公は、群馬に住む男性です。
何に対しても熱くなれず、他人と深く関わることを避け、
毎日をなんとなく過ごしているような人です。
だからと言って嫌な奴ではありません。
言われたことはしっかりやりますし、結構素直です。
でも、何を考えているかわかりにくいと思われてしまうようなところがあります。
そんな彼が、高校時代の後輩女子との再会や
東京から移住した木工職人の男性との交流を通して
少しずつ変わっていく様が描かれます。
木工職人の工房になんとなく集まって会話をし
毎日が過ぎていくような、どこかふわふわした日々の物語なのかなあ。
と思いきや!
ある日そんなゆるさを断ち切るような事件が起きます。
この先は、是非本を読んでみて下さい♪
・・・
主人公の彼はよく車を運転しています。
その運転中に色々考えをめぐらします。
本を読みながら、彼とともにドライブをしているような気分でした。
そして時々、彼と自分の頭の中が重なる瞬間があるような感覚になりました。
私は彼ではないけれど、なんとなくわかるなあと。
大きく共感というわけではないけれど、
近づいたり離れたりしながら、時々交わるような。
実際、人との関係ってそういうものなのかもな。
この本を閉じた瞬間は、車のドアをバンッと閉めて車から降りたような感じがしました。
またいつか、彼のドライブのお供をしてみたいな。
あなたも『薄情』を読みながらの想像群馬ドライブ、してみませんか?
ドライブの後は、きっとちょっと景色が違って見えるはずです。
・・・
そうそう、絲山さんからリスナーのみなさんへのメッセージを頂きました。
今日のユキコレ(13:45頃〜)でご紹介しますので、お楽しみに〜。