ネンレイズム 開かれた食器棚
2015年12月23日
突然ですが、質問です。あなたは何歳ですか?
今頭の中には、実際の年齢が浮かんだことと思います。
質問を変えます。精神年齢は何歳ですか?
もう一つ質問。何歳に見られたいですか?
いきなり年齢の質問ばかりでごめんなさい。
年齢についてのお話は、女性でしたらなるべくなら避けたい話題ですよね・・・
と言いつつ、しつこく続けます。(笑)すみません!
女性の皆さんは何歳の頃から様々な変化を感じるようになりましたか?
女性は35歳を過ぎた途端、大きな区切りができます。
35歳以上の出産は「高齢出産」となることが
35歳という年齢を際立たせているように思いますが、
実際、29と30より、34と35の差のほうが大きいように感じます。
***
前置きが長くなりましたが、
今日ご紹介する本は、そんな年齢のことが書かれたお話です。
山崎ナオコーラさんの『ネンレイズム・開かれた食器棚』
という2つの作品が収められた小説です。
***
まず、「ネンレイズム」は高校生たちのお話なのですが、
主人公の女子高生は、自称68歳。
おばあさんになりたいと思っていて、
自分のことを「ワシ」と言い、
グレーのエプロンドレスの上に、えんじ色のショールをかけるといった
おばあさんっぽいファッションをし、
シルバーカーを押しながら歩いています。
でも、決してふざけていません。
なぜなら彼女は68歳のおばあさんになりたいから。
彼女は友人たちと一緒に町の公民館の編み物クラブに通います。
友人のうちのひとりは、坊主のスカート男子です。しかもイケメン。
男になるか女になるかは30歳くらいに決めればいいと思っています。
そんな彼らの物語です。
正直言って、とても独特な世界です。
でも、いたって真面目な物語なのです。
主人公の「ワシ」の言葉づかいが丁寧なのもありますが、
背筋がピンと伸びるような正しさがあります。
でも、高校生らしさももちろんあります。
自称68歳と言いつつも
時折、高校生らしさが滲み出るのが、逆にとても可愛く思えます。
自分の考えにないものは、なかなか受け入れられなかったりするものですが、
この作品を読んでいると、受け入れるとか受け入れないとかということではなく、
なんて自由なんだろうと思えます。
それどころか、自分らしく生きていきたい!
と高校生のうちから他の人の目など気にせず
堂々と振舞っている彼らがかっこよく見えてきます。
この物語は、後半、え?えーー??という展開になっていきます。
突然過ぎることが続きます。
詳しくは、本を読んでみてね。
***
もう一つの作品は、主婦2人で始めたカフェの物語です。
こちらは女性の35歳問題や出生前診断が大きく取り上げられています。
私もまさに対象の女性なので、ひとごととは思えませんでした。
この物語の中に出てくる
「多様性を認めて弱い存在も生き易くする」
というひとことが強く印象に残りました。
この「多様性」という言葉は、
これからの時代に必要な言葉なんじゃないかなと思います。
最近、いろいろなところで見たり聞いたりしますし。
でも、自分と異なる考えや存在を認めることって
そう簡単にできるものではないと思うのです。
でも、認めていかなければいけないと思うのです。
小説っていいですね。本当に自由です。
難しい問題でもそんなに難しいものではないのかもしれない、
と思わせてくれる力があります。
この物語、とくに「ネンレイズム」のお話は、
実際にあったら世間の目はもっと冷たいのかもしれません。
でも、この物語の中では風通しがとてもいいのです。
大人になるとよくも悪くも自分の考えというのが固まってきます。
心の隙間が無くなっていくのですよね。
ずっと押し入れに閉まったままの布団はじめっとしてくるものですが、
たまにお日様にあてるとふんわり軽くなりますよね?
あなたも布団干しならぬ「心干し」してみては?
その方法は、この本を読むだけ!
雪の富山でも心は干せます。(笑)