悲素
2015年9月16日
今日のキノコレ(grace内コーナー13:45頃オンエアー)
でご紹介する本は、
帚木蓬生(ははきぎ・ほうせい)さんの『悲素(ひそ)』です。
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帚木さんの本は、これまでも何冊かご紹介してきました。
過去に私がブログにあげた感想のリンクをはっておきます。
・『閉鎖病棟』の感想は コチラ
・『インターセックス』の感想は コチラ
・『エンブリオ』の感想は コチラ
いずれもいい作品です。
特に『閉鎖病棟』は好きな作品です。
しかし、いずれの作品も長編ですので、
お時間のある時にでもじっくり、
それこそ、シルバーウィーク中に読んでみてもいいかもしれません。
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そしてそして、今回ご紹介するのは、そんな帚木さんの新作『悲素』です。
紀伊國屋書店富山店の奥野さんも紹介文を書いていますので、
まずは、そちらからお読みください。
・奥野さんの紹介文は コチラ
私も読んでみました。
今回も手に持った時にずしりと重みのある長編です。
いや、実際の重みだけじゃないな。
本の内容も重みがありました。
本を開くとまずこう書かれています。
「和歌山カレー事件の犠牲者・被害者の方々に本書を捧げる」
と。
皆さんもよくご存じの実在の事件が題材になっています。
本を読んでいると、確かにこの事件への「怒り」が感じられます。
ああ、著者は怒っているなというのが伝わってきます。
そして、同じように読者である私も怒りがふつふつとわいてきました。
でも、怒りだけでは終わりませんでした。
というのも、この事件には、
真面目にまっすぐに仕事に取り組む人たち
がたくさん関わっていたからです。
自分のことしか考えられない人もいるけれど、
他人のことを自分のことように大切に思える人たちもたくさんいるのですよね。
そんな方たちと出会えたのも、この本を読んだから。
帚木さんの作品は、必ず温度、ぬくもりを感じます。
辛い話題も多いけれど、でも辛さを伝えるだけではありません。
人のいい部分にも必ず触れられます。
それから、この本を読みながら思ったことが一つあります。
最近、日本各地で自然災害が猛威をふるっていて、
人の力ではどうすることもできないことも多いですが、
でも、人が人を傷つけることは防げるよなと。
これ以上、人の手による悲しい世の中には
なってほしくないなと改めて感じました。