あの家に暮らす四人の女
2015年9月9日
最近、『谷崎潤一郎』の名前をよく見かけます。
もしやこれは、谷崎潤一郎の本を読めということなのか?
と思っている時に本屋さんで、
三浦しをんさん の 『あの家に暮らす四人の女』
という本が目に飛び込んできました。
本の帯には「谷崎潤一郎メモリアル特別小説」とあります。
また、「ざんねんな女たちの、現代版『細雪』」ともあり、
「ここにも谷崎潤一郎!」と思い、手に取ってみました。
そして、せっかくなら谷崎潤一郎さんの『細雪』も読もう!
と思ったものの、この作品、かなりの長編だったのですね。
今から読んでもラジオのオンエアーには間に合わないと思い、
今回は読むのを断念。でも、いつか読んでみたいわ。
ちなみに、私が最近「谷崎潤一郎」の名前をよく見かけたのには
ちゃんと理由がありました。
今年は、谷崎潤一郎没後50年なんだそうです。
道理で!
***
三浦しをんさんの『あの家に暮らす四人の女』は、
『細雪』を意識した内容になっているそうで、
似たようなエピソードがあったり、
登場人物4人の名前が少しずつかぶっていたりしています。
といっても私は『細雪』を読んでいないので、
その部分での感動を味わえないのが残念なのですが。
ただし!
『細雪』のストーリーそのままというわけではありません。
タイトルにもなっている四人の女は姉妹では無いですし。
4人の女は、37歳で独身の刺繍作家、その母。
刺繍作家の同い年の友人とその後輩です。
彼らは、東京杉並の古びた洋館に住んでいます。
物語は、4人がどんな人物で、
何がきっかけで一緒に暮らすようになったのかの説明を交えながら、
彼女たちの日常がゆっくり描かれていきます。
お弁当を作ってお花見に行ったり、
家事の当番通りに料理をしたりお風呂掃除をしたり、
夜寝る前にお話したりする日常が。
それがどれもとてもリアルです。
いや、リアルだと感じるのは、
主人公たちが私と同じアラフォー独身女性だからかもしれないな。
悩むこと、感じることは、みんな一緒なんだなと
まるで彼女たちとお喋りをしているかのような気分になりました。
また、女性って話がずれたまま楽しめちゃうところがありません?
そういった意味のない会話が何度も繰り広げられ、
そのゆるさが何とも言えず心地よかったです。
それにしても、人の会話をこっそり聞くのって、面白いですね。
読書は、ある意味、人の会話の盗み聞きなのかもしれないな。
それも堂々とできる。
ちなみに、この物語は刺繍作家の女性を軸に、
一人称がころころと入れ替わるので、
まるで、舞台を見ているかのようでした。
会話劇のような文章は、とてもテンポがよくて、
読んでいて気持ちよかったです。
***
しかし。
彼女たちの日常が一変する出来事が起こります。
4人が暮らす洋館の「開かずの間」を開けたとき、物語が動き始めます。
4人の女性の日常を描くだけの物語だと思っていただけに、
突然の方向転換にびっくり!
でも、まー、こういうこともあるか!と思って、
状況を受け入れてみたら、色々なことが面白く感じられて、
本を読みながら、大声で笑ってしまいました。
ほんっと面白かった!!
あなたも女性たちのかしましい会話に耳を傾けてみては?
特に妙齢の独身女性の皆様は共感ポイント満載だと思います。
「もう大人だしなー」と思いながら、色々我慢している女性の皆さん、
悶々としている時間をこの本を読む時間にあててみてはいかがでしょう?
この本を読んだ後は、ちょっと心が軽くなるかも。
飲みに行って愚痴を言ってストレス発散するのもいいけれど、
本を読んで満たされる夜があってもいいのではないかしら。
そうそう、この本は、著者の三浦さんの言葉選びが素敵で、
そんな表現に出合う度にうっとりとしていました。
たとえば、「寝る」 ⇒ 部屋に寝息が浮遊しはじめた
などです。
普通の出来事も、言い方を変えるだけで、ぐっと魅力的なものになるものだなあ、
と読書の面白さを改めて実感した一冊でもありました。