満水子
2008年6月29日
気ままプランの廣川奈美子さんから
「たじちゃん、読んで(ハート)」と突然、渡されたのが、
高樹のぶ子さんの小説『満水子(まみこ)』の上下巻。
「かなり官能的よ」といわれ、パラパラッとめくってみると、
確かに、ちょっと見ただけでも、なまめかしい感じでした・・・。
奈美子さんは、なぜこの本を私に?
と思いつつ、読んでみると、かなり面白い!!
私は寝るのを忘れ、読み続けてしまいました。
タイトルの「満水子(まみこ)」とは、水ばかりを描く女流画家です。
ノンフィクション作家の坂本重治(しげはる)は、
彼女についての記事を書く仕事を任されます。
そして、満水子について調べていくうちに彼女に惹かれていきます。
しかし、調べれば調べるほど、後戻りできなくなり・・・。
30代後半でも、少女のようなキュートさを感じさせる満水子。
小悪魔的な雰囲気をプンプン漂わせています。
何が真実で何が嘘かわからないようでいて、とても素直にも見える、
その振る舞いに、坂本は振り回されます。
プライドの高い男性が、プライドを失い、そして、忘れ、
どこまでも自分に正直になってしまう様は、
女性から見ると、(いや、女性というより、私から見ると)とても気持ちいい。
私は、男性はプライドを無くしてしまってはいけないと思うけれど、
プライドだけでもダメだと思うの。
だから、プライドがなくなって、一人の人間になったとき、
その人らしさがわかると思うんです。
満水子は、そんな男性のプライドを簡単になくしてしまう、
不思議な魅力をもっています。
そんな人間らしくなった坂本が、
秘密だらけの満水子の正体を明かすべく追っていく様も、とても面白い。
舞台が、東京、京都・嵐山、越後湯沢、郡上八幡、函館と変化していったり、
季節が移ろっていったりする様も、描写がとても丁寧で、
景色が目に浮かび、寒さや暑さが肌に感じられるほどでした。
そして何より素晴らしいのが、
この小説は、坂本視点、つまり男性の視点で書かれているにかもかかわらず、
実際に書いているのは女性なんですね。
そこも、読みやすい原因なのかもな。
梅雨空が続いていますね。
「水」の季節の今にぴったりの本です。
是非「水」がキーワードになった長編小説『満水子』。
読んでみてはいかが?