ブログトップページはコチラ

食堂かたつむり

2008年5月19日

『 食堂かたつむり / 小川糸(おがわいと) 』

今月の「ふみたん」で紹介されていた本『食堂かたつむり』を読みました。

この本は、今、20代の女性を中心に人気が出ているそうです。
それは、本の表紙にヒントがあるのかも。
まるで、絵本のようにやわらかなタッチは、確かに女子ウケしそうな感じ。

しかし、冒頭、穏やかな日常とはほど遠い出来事からスタートします。
料理人の倫子は、あるショックな出来事が起こったことが原因で、
声が出なくなり、山あいのふるさとに帰ります。

長年、不仲の母親から物置を借りて、そこで、メニューのない食堂をはじめます。
お客様は、一日一組のみ。
事前に面接をし、お客様にあった料理を作ります。
材料は、近くの森や畑でとれたものばかり。
「マタタビ酒を使ったカクテル」
「林檎のぬか漬け」
「比内地鶏を丸ごと一羽焼酎で煮込んだサムゲタンスープ」
「新米を使ったからすみのリゾット」
などなど・・・。
メニューの言葉の響きが、リズムを伴って、
心地いいお音楽を聴いているかのごとく、心にす〜っと入ってきます。
本を読んでいるだけで、体にいい食事をしているような気持ちになれます。

そして、食堂かたつむりでご飯を食べると、
小さな奇跡が起こるという、うわさが広がります。

そんな中、確執を抱えたままの母親との関係に、徐々に変化が訪れ・・・。

物語は、繊細な文章によって、静かに丁寧に進んでいきます。
途中までは、穏やかな日差しが常に差し込む、オシャレな食堂で、
のんびりハーブティでも飲んでいるような、おだやかさが続き、
癒し系の軽めの本なのかな、と思いきや、
ある事実があきらかになってからは、「癒し」などという言葉はどこへやら、
心臓の音のリズムが、1、5倍早くなります。
そして、私は、突然、むせび泣いてしまいました。
いきなり泣かされて、私自身、本についていけない感じでしたが、
それは、主人公の倫子も同じだったと思います。
倫子の気持ちが手にとるようにわかりました。

実は、私は、最近、涙があまり出なくなっていたのですが(苦笑)、
久しぶりに、涙がとまりませんでした。
泣いたことで、心がスッキリしました。

『食堂かたつむり』でご飯を食べると、小さな奇跡が起こる、と言われていますが、
読むだけでも、読んだ人に、何かしらのいい変化が起きるのかもしれませんね♪

愛と優しさに包まれた、とても素敵な本でした。
何かを失って、無気力になっている方いらっしゃいませんか?
そんな方は、とりあえず、ゆっくりでいいから
『食堂かたつむり』を読んでみてください。
読み終えた後は、しめっぱなしのお部屋のカーテンを開けたくなると思いますよ。

『食堂かたつむり』
こんなことを言ったら失礼かもしれないけれど、
(あえて、衝撃の大きさを伝えたいので、書きますが)
思いがけず、とっても、いい本に出会えました。 

yukikotajima 10:09 am