男ともだち
2014年7月23日
先週の木曜日、7月17日に、
第151回芥川賞・直木賞の受賞者が発表されました。
芥川賞は柴崎友香さんの『春の庭』に
直木賞は黒川博行さんの『破門』に決定しました。
どちらも早く読みたいなあと思いつつ、
ノミネート作品もチェックしてみたところ、
直木賞に、以前ラジオでご紹介した米澤穂信さんの『満願』
がノミネートされていました。
他の作品も気になるタイトルが並んでいて、
受賞作以外も読んでみたくなり、さっそく1冊読んでみました。
千早茜(ちはや・あかね)さんの『男ともだち』です。
女性の皆さんには、男ともだちはいますか?
また、男性の皆さんには、女ともだちはいますか?
恋人ではなく、ともだち。
異性のともだちはありかなしか?なんて議論は、
もう何度も繰り返されてきていますよね。
もちろん異性のともだちはいる。
でも、親友となると、うーん。それって恋人とはどう違うの?
という疑問もわいてきそうですが、
でも、恋人じゃなくて、やはりともだちなんです。
という関係もありますよね?
そんな男ともだちとのやりとりが綴られた本が、
今回の直木賞にノミネートされた
千早茜(ちはや・あかね)さんの『男ともだち』です。
***
主人公は、京都在住の29歳のフリーのイラストレーター神名葵(かんな・あおい)。
彼女は、年下の恋人と同棲しながらも、既婚のイケメンドクターとも付き合っています。
そんな彼女のもとに、七年ぶりに大学時代の男の先輩ハセオから連絡がきます。
大学時代、仲良くしていた男ともだちです。
お互いのことがよくわかっていて、一緒にいると落ち着く。
しっくりくる。そんな言葉があう人。
ハセオはいま、仕事で富山にいます。
そう思うと、このお話がとてもリアルなものに思えてきます。
富山の話題が出る度、私はニヤニヤが止まりませんでした。
ちなみに、ハセオは自分の仕事のことを「富山の薬売り」と言っています。
具体的には、病院の先生に薬を販売する仕事をしています。
そんな彼から突然の電話。
仕事で時々京都に行っているから会わないか、と言われ、久しぶりに会うことに。
その後も連絡を取り合い、時々会うようになります。
でも、ハセオは男ともだちです。恋人ではありません。
ハセオにも彼女らしき人がいますし。
でも、神名もハセオもまるで付き合っているかのような距離感で、仲がいい。
本を読んでいると、これはもうお互い「好き」ということなんじゃないの?
と思えるのだけど、やはり二人の関係はともだちなんです。
神名は、同棲中の彼氏から「男ともだちってずるい響きだよね」と言われてしまいます。
この二人は、このままともだちのままなのか、
それとも・・・
ハセオとの関係が気になって、ページをめくる手が止まりませんでした。
***
この本には、ハセオとのやりとりだけでなく、
仕事に関する描写も多く、共感できる言葉がちりばめられていました。
ああ、私が求めていた言葉はこれなんだよと思ったり、
わかっていながらも逃げていたことを指摘された気分になったりして、
まるで、私自身に言われているかのような錯覚におちいりました。
こうした方がいい。という指摘って、
年齢を重ねれば重ねるほど、
正しいと思っていてもなかなか心が素直に動かないもので、
まず反発心が出てきてしまいがちだけど、
なぜか、この本に出てくる言葉は素直に聞けました。
そう、この本は心を素直にしてくれるのです。
あ。そうか!
この本は、男ともだちっぽいのかもな。
女ともだちは、似すぎているから反発が起こることもあるけれど、
男ともだちは、ちょっと違うから素直に聞けるのかもしれません。
***
『男ともだち』。読んでよかったです。
想像以上に面白かった。
富山の皆さんは、富山の話題も結構出てきますので、
より楽しめると思いますよ!
とくに女性の皆さん、是非読んでみてください。