乳と卵
2008年4月11日
第138回芥川賞受賞作品「乳と卵(チチトラン)」を読みました。
著者は、自称、文筆歌手のシンガーソングライター 川上未映子さんです。
ストーリーは、
初潮を迎える直前で無言を通す娘・緑子と
豊胸手術を受けようと上京してきた母親・巻子、
そして、その巻子の妹である「わたし」が
東京のわたしのアパートで過ごす三日間の物語です。
とはいうものの、大きな事件が起こるわけでもなく、
物語は淡々と進んでいきます。
饒舌というよりも、どちらかというと、聞こえる音は、静かな感じ。
確かに、心の声は、次から次へと出てきていますが。
そんな「わたし」の心の声が、独特な長い文体で、まるで歌うように、綴られています。
どこで区切ればいいのか、大阪弁を交えながらの、長い文体は、
最初は、少し読みづらいかもしれない、と思うかもしれませんが、
慣れれば、歌のようにも聞こえてきます。
独特なリズムが心地いい感じ。
著者の川上さんが、シンガーソングライターでいらっしゃることと
関係しているのかもしているなぁと思ったのですが、
川上さんは、違う!とおっしゃるかもしれませんね(笑)。
さて。
巻子を見ていると、なんかイライラしてきました。
あぁ。めんどくさい人だ、と。
でも、一番、一般的な女性なのかもしれません。
姉の巻子は、自分の胸を大きくしたいと真剣に思っています。
そのことを、娘も妹も理解はしていません。
でも、自分にしかわからない体の悩みは、誰もが持っているもので、
他の人には、なんでそんなことをするの?と思われることでも、
自分にとっては、24時間考えてしまうくらいの深刻な悩みだったりするのですよね。
私にもよーくわかります。
巻子が、いっぱいいっぱいになってしまう気持ちが、みっともなく、
でも、どこかで自分を見ているような気がして、
だから、イライラしたわけです。そして、切ない気持ちになりました。
女ってめんどくせー、という声が聞こえてきそうですが、
めんどくせーんですよ、女って。
そして、何も考えていないようで色々考えているんです。
「乳と卵」。
あなたも3人の夏の3日間をともに過ごしてみませんか?