哀愁的東京
2008年1月27日
今日は本をご紹介します。
★『哀愁的東京/重松清(角川文庫)』
全部で9つのお話が収められたこの本は、
今はフリーライターの仕事で生計を立てている、
新作がかけなくなった絵本作家、新藤宏40歳が主人公の連作です。
新藤は、仕事で様々な人と出会います。
アイドル歌手、企業家、エリート社員…。
肩書きだけ聞けば、
新藤は、なんて華やかな人たちと仕事をしているんだ、って思いますよね?
でも、本のタイトルは「哀愁的東京」です。
「哀愁」です。
この本に登場する人たちは、一見華やかそうに見えて、
実は、何かを失ったり、失う一歩手前の人たちなんです。
だから正直重いです。
でも、重いまま終わりません。
必ず最後は納得する形で終わっています。
というか、納得せざるを得ないのかもしれませんが。
人間、生きていたら、きっと誰もがそういう状況に出くわすことがあると思うんです。
もし、自分が渦中の人物になってしまったらどうしますか?
私は、出てくる人たち全員が他人事とは思えなくて、
近い未来の自分のようにも思えて、
その先が知りたくて、
夢中で読み進めてしまいました。
そして、読み終えた後は、まぶしく感じました。
一筋の光が差し込んでいるような気がして。
今「ムナシイ」という気持ちが心のどこかに存在しているあなたには、
『哀愁的東京』は、いい処方箋になるかもしれません。