ふくわらい
2012年8月29日
今日ご紹介するのは、全国の書店員さんたちの間で話題になっている本です。
今月はじめに出たばかりの、
西加奈子さんの『ふくわらい(朝日新聞出版)』。
最初の1ページを読んで、この本が好きだと思いました。
ページをめくり始めてからはノンストップでした。
普通じゃない話もたくさん出てきます。
いや、普通じゃないことだらけかも。
例えば、生首をサッカーボールにしてみてはどう?という会話とか、
会社の屋上で不思議な呪文を唱えながら雨乞いを始めるとか、
その他にも、様々。
もし私が、例を全て上げると、
それだけで、うっっ。となって、
もう結構!と思うだけでなく、
私が悪趣味と思われてしまいそうなのでやめておきます。(笑)
最初にことわっておきますが、
私はこれらのことが好きというわけではありませんよ〜!
「小説」として面白い本でした。
また、言葉を紡ぐとはどういうことか?
心で感じるとはどういうことか?
といったこととも向き合っていて、
私が普段思っていることを、
小説の中の登場人物たちが真面目に語り合っているのが、
とても気持ちよかったです。
そういう点でも読んで良かった本でした。
***
主人公は、定(さだ)という25歳の女性編集者。
小さいころから変わらない趣味は、
暗闇でひとり、ふくわらいで遊ぶこと。
いつからか、人の顔をじーっと見つめては、
勝手に顔のパーツを切り離し、ふくわらいのようにして楽しむ、
という想像(妄想)をするようになり、
無言で人の顔を見つめる女として、不気味がられるようになります。
そんな定は、言葉遣いがとても丁寧で、性格も真面目そのもの。
冗談が通じないので、ロボットなのでは?などと言われてしまうことも。
しかし、そう言われても、
「私の手の甲には、血管がはっきりと流れています。
信じられないら、少し切ってみましょうか?」
と真面目に返してしまう。
つまり、定は個性的な女性です。
でも、そのほかの登場人物も相当個性的。
そんな濃いメンバーが次々に登場して話がどんどん濃厚になっていき、
いったいこのお話はどこに向かっていくんだろう?
と、本のページをめくるのが、楽しみで仕方ありませんでした。
そして。
想像もつかないラストが待っていました。
ああ。
この気持ちよさを味わわせるために、
西さんは、この話を書いたのね、と、納得。
やはり作家さんはすごいなあ。
文字を読んでいるだけなのに、
私の全く知らない世界が体感できてしまう。
そんな読書を私はあらためて、好きだわあ、と思いました。
今回も素敵な読書時間となりました。
西さん、ありがとう。