たまには、こわい話も。
2012年4月25日
自分の醜さにぞっとすること、無いですか?
言葉にせずとも生じてしまった自分の感情に対して、おお、こわっと思ったり、
普通じゃない考えが頭をよぎったり。
私はあります。(笑)
我ながら性格悪いなと思うことはたびたび。
自分の頭に浮かんだ醜い考えに対し、ふんと鼻で笑い、
その「ふん」という音で、うわっ私ってば最悪だわと気付かされることも。
でも、誰にでも醜い部分はあると思うのです。
ただそれを表に出していないだけで。
でも、もしそれが表に出てしまったら…。
・・・
今回ご紹介する2冊は、
いずれもそんな負の部分が表面に出てしまった人たちのお話です。
小説として面白いのはもちろん、
こんな人もいるのね、と勉強にもなるかも…
いや、そんな簡単ではないな。
人のこわさに直接触れるので、
人を見る目が変わるかもな。
もしかしたら、今あなたが信じている大切な人のことまで疑いたくなるかもしれません。
いやあ、こわいこわい。
でも、こわいものからは逃げたくなるけれど、
こわいからこそ知りたくなるものだったりしません?
って、こんなあおり方をしている私は、
すでに性格がよろしくないですね。(笑)
・・・
まず1冊目は、先日発表された「本屋大賞」の
「翻訳小説部門」で第1位となった作品です。
『犯罪/フェルディナント・フォン・シ−ラッハ著、
酒寄進一(さかより・しんいち)訳(東京創元社)』
世界33か国で翻訳され、数々の文学賞を受賞、
さらに映画化も決定しているという超話題作です。
内容は、ドイツ・ベルリンの刑事事件専門の弁護士である著者が
かつて実際に起きた事件をもとに、
罪を犯してしまった人間たちのことを描いた短篇集です。
事件を時系列に並べてただ淡々と紹介しているようなものではなく、
犯罪者に寄り添い、
なぜ事件を犯すに至ったのか、
その心のうちがとても鮮明に描かれています。
一生愛すると誓ったにも関わらず、妻を殺してしまった医師、
人間や動物が数字に見える男、
彫刻「棘を抜く少年」の棘のありかを探し続けた男
といった犯罪者たちが罪を犯すまでの過程が描かれています。
客観的に読みはじめても、
気付いた時には、物語にどっぷりつかっている。
私は、その繰り返しでした。
それは、事件をというより、
人を描いているから、そう感じるのだと思います。
生々しい心理描写をどうぞ味わってみて下さい。
・・・
そしてもう1冊は、
『モンスターU子の嘘/越智月子(小学館)』
です。
ページを開くとまず登場人物の紹介一覧があります。
しかも、主人公U子のほかの登場人物は、U子の被害者と書かれている!
その数なんと17人。
しかも被害者は、男性だけではなく女性も。
どんな悪女よ!?
私は絶対に騙されない、
と鼻息荒く、ページをめくっていきました。
時代は、昭和の終わり、昭和63年。
U子は、元ホステスで、現在は喫茶店を経営している40代の女性です。
そんなU子が、常習賭博の現行犯で逮捕されます。
物語は、二人の目線で描かれます。
一人は、U子の過去を追うフリーライターの男性。
そして、もう一人は、元銀行員の服役囚の女性。
二人の目線を通して、U子が何者なのかが描かれていきます。
噂では、U子は男女ともに次々に虜にし、
さらにU子に惚れた人はみな不幸になるという。
実際、U子は、さらりと人をだまします。
でも、皆思ってしまうのです。
私だけはだまされるはずがないと。
U子は、わかりやすくぶりっこというわけではありません。
基本的にはクールで、どちらかといえば、冷たい。
だからこそ、自分の前だけで笑顔や弱みを見せられると、
皆ころっといってしまうのですね。
しかもU子は、結構かっこいい女性でもありまして。
田島セレクトのU子語録を3つあげてみます。
1.女は男と張りあおうとしてもダメ。
こっちは猫撫で声で指図すればいいだけ。
負けて勝つ。それが女に生まれた醍醐味。
2.頂上にいる男より、そこに向かって突き進んでいる男の方が面白い。
3.自分で人生をつかみとれば?いくらだって自由に生きられる。
ちなみに、どれも私の心に響いてしまった言葉です。(笑)
そして、これらの言葉からもおわかりいただけると思いますが、
U子は潔いのです。
ブレがない。
だから、人は惹きつけられてしまうのかもしれません。
って、もしや私もU子にはまってる…?(笑)
いやいや、私は、女性としてのかっこいい部分は認めるけれど、
U子様のターゲットには絶対になりたくないわっ。
あなたは、U子のことをどう思うかしら?
ぜひ、自分の心を試してみて下さいな。