二流小説家
2012年1月25日
今日のユキコレ(13:45〜オンエアー)で紹介するのは、
去年、ミステリーランキング初の三冠を達成した話題のミステリーです。
ちなみに、1位を受賞したのは
・『このミステリーがすごい!2012年版 海外編』(宝島社)
・『週刊文春ミステリーベスト10 2011年版 海外部門』(文藝春秋)
・『ミステリが読みたい! 2012年版 海外編』(早川書房)
です。
その超話題作とは、
デイヴィッド・ゴードン(青木 千鶴・訳)の『二流小説家』です。
年末に、紀伊國屋書店に買いに行ったところ、売り切れていて無く、
予約注文したほどでした。
『二流小説家』は、通常の小説よりも小ぶりサイズの
「ポケミス」と呼ばれるタイプの本です。
私がすぐに思い出したのは、「ポケット六法」。
まさにあのサイズです。
また、本の表紙は、ライトグレーに英字が印刷されただけのシンプルなものだったり、
透明のカバーが掛かっていたり、
紙の色が黄みがかっていたりと、
シンプルな中に個性も感じられる、おしゃれな本です。
この本をカフェで読んでいたら目立ちそうです。
ちなみに私は、自分の部屋で読みました。(笑)
さて、この『二流小説家』とは、どんな本なのか、
早速中身をご紹介しましょう。
主人公は、ニューヨーク在住の売れない中年作家、ハリー・ブロック。
ハリーは、様々なペンネームを使いわけながら、
シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆をしているものの、
売れ行きはぱっとせず、家庭教師をしながらなんとか食いつないでいます。
その上、ガールフレンドには愛想を尽かされてしまうという、ダメ男。
しかし、そんなハリーのもとに、1通の手紙が届きます。
差出人は、連続殺人鬼、ダリアン・クレイ。
内容は、告白本の執筆を依頼できないか、というものでした。
しかし、ひとつだけ条件を出されます。
果たして、ハリーは、条件をクリアし、告白本を完成させられるのか?
といったところから物語がスタートしていきます。
しかし、ハリーは、ヒーローではありません。
売れない中年作家です。つまりは、普通の人です。
そんな彼が、凶悪犯と関わることで今までの生活に変化が生じます。
例えば、穏やかなでないことにも巻き込まれてしまいます。
そんな時、ヒーローが主人公だったら、
スマートに対応できそうですが、そうはいきません。
また、美しい女性が、自分の書いた作品のファンだと知るものの、
自分がその本を書いた本人とは言えず、
心の中で舞い上がっているような人です。
勝手な私のイメージですが、
もし、日本で映像化されるなら、
ハリーは松尾スズキさんにやっていただきたい。ぴったりだと思います。(笑)
ハリーの人間臭さも、この本の魅力の一つなのかもしれません。
一見、オシャレな装丁の本ですが、
その中身は、決してスマートなものではありません。
でも、本を読み終え閉じた後の表情は、
きっとスマートな満たされたいい顔をしているはず。
最後に、ストーリーとはそんなに関係無いのですが、
読書について綴られている箇所がとても印象に残りましたので、
ちょこっと載せておきますね。
読書は旅、現実逃避の手段ともなる。
ぼくは、そこに刻まれた言葉が頭の中の声を掻き消し、
ぼくがぼくであることを忘れさてくれる。
あなたも時々は、頭の中の声からちょっと離れて、
小説家の声だけに耳を傾けてみませんか?
いい気分転換になると思いますよ。