42『下町ロケット』
2011年8月10日
先日、紀伊國屋書店富山店に行ったところ、
ズラリとある本が並んでいました。
先月、直木賞を受賞した、
池井戸潤(いけいど・じゅん)さんの『下町ロケット(小学館)』です。
去年の秋に発売され、直木賞も受賞されたということで、
既にお読みになっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
『下町ロケット』は、
ロケットを飛ばすという、宇宙工学研究の道をあきらめ、
東京都大田区にある実家の町工場を継いだ男の物語です。
主人公・佃(つくだ)が社長になってからは、
佃製作所は、業績も上がり、まずまずの状態が続いていました。
ところが、突然取引が停止されたり、特許侵害の疑いで訴えられたりと、
大企業の思惑に翻弄され、倒産の危機に陥ってしまいます。
そんな中、もう一社、佃製作所に近づこうとしている企業がありました。
それは、政府から大型ロケットの製造開発を委託されていた帝国重工。
新型水素エンジンを開発したものの、
すでに佃製作所が特許を取得していたのです。
特許を譲るよう、佃製作所に申し出ます。
次から次へと横暴な大手企業や銀行から振り回される佃製作所。
さて、社長の佃は、どのようにしてこの危機を乗り越えるのか、というお話です。
情熱とプライドをもって仕事をしている熱い男たちの物語のなんて爽快なこと。
よし!私も頑張るか。と気合いが入ります。
でも、本を読み終えた今は、この本を読んで本当に良かったと思うのですが、
実は、途中までは、ずっとイライラしっぱなしでした。(笑)
なんで、日常でも不快なことが多いのに、
本の世界の中でまでイライラしなきゃいけないのよっ!
と、ずっと不機嫌な私。
でも、どんな嫌がらせを受けても、逃げずに戦うんですよ、この佃製作所は。
プロとはこういう人たちなんだ、と気付いた時には、
先ほどまでのくだらない苛立ちはなく、
素直な気持ちで読んでみたら、いい言葉にたくさん出会えました。
こういう人にはなりたくない、
こんな態度を取るのはやめよう、
と、反面教師になるだけでなく、
仕事をする上で大切な前向きな言葉や判断もたくさん出てきて、
「働く」ということにおいて、大変勉強になりました。
よっぽど、ビジネス書や名言集を読むより、心に残ると思います。
どんなに大切な言葉も、単体では心に残りにくいと思うのです。
前後の流れがあって、そのストーリーの中で出てくるからこそ、響くのではないかと。
だから私は、名言集などを読むより、
小説を読んでいる中で、素敵な言葉に出会う方が好き。
今回も言葉がキラキラ輝いていました。
いい言葉は、そこだけ文字が浮かび上がってくるような気がしてくるのですが、
『下町ロケット』でも、その感覚を何度も感じました。
ちなみに、私が心に響いた言葉をいくつかあげてみます。
「人間の本性が現れるのは、平時ではなく、追い詰められたときである」
「なにが正しいかは、後になってみないとわからない。
肝心なことは、後悔しないことだな。そのためには、全力をつくすしかない」
どうです?
まるで、ビジネス名言集のようでしょ?(笑)
情熱を持って仕事をしている方、
企業を率いるトップの方、
理不尽なことだらけで、気持ちが滅入り気味の方、
などなど、ぜひ、読んでみてください。
読んだ後は、気持ちも前向き、
というか、ロケットのように上に上に向かっているはずです↑↑↑