49『遊牧夫婦』
2010年9月13日
9月も半ばに差し掛かろうとしています。
日中はまだ暑いとは言え、一雨ごとに涼しさが増してきているように感じます。
夏はもう終わってしまいましたが、
私は、「夏」=「夏休み」のイメージをもっています。
働くようになってから、長期の夏休みを取ったことは、一度も無く、
それこそ、夏休みに海外旅行など一度もしたことはありません。
それでも、夏は、休みの日ごとに、ワクワクして、どこかに出かけたくなります。
たぶん、全国各地で、夏フェスやお祭りなど、
様々なイベントが行われているから、そう思うのかもしれませんね。
私も、この夏は、常にどこかに出かけていたため、
夏が終わった今も、夏休み気分が抜けず、夏以上にどこかに行きたくて仕方がありません。
できれば、海外に行きたいけれど、そんな暇も(お金も)なく…。
それならば、いつかどこかに旅に出る日のために(いつだ?)、
どこに何をしに行くか予習をしたり、行った気になったりするために、
とりあえず、本を読んでみよう、と思ったところに出会ったのが、この本でした。
出版社のミシマ社と言えば、
先日、そのミシマ社から出ている『ボクは坊さん。』をご紹介しましたが、
その本を読んだとき、本に折り込まれていた新刊案内を見て、
次は、これを読みたい!と思ったのでした。
本の帯には、「無職、結婚、そのまま海外!」とありました。
なんとも気になる単語の数々。
著者の近藤さんは、1976年生まれで、私と同世代。
近藤さんと奥さまのモトコさんは、
学生時代にオーストラリアで出会い、
その後、紆余曲折を経て、無事、結婚。
世界各地を旅しながら、ルポライターとして時々記事を書いて、生活していく、
まさに遊牧生活を送った夫婦の物語です。
この本には、5年間に及んだ遊牧生活の1年目が綴られています。
私は、これまで、エッセイは、自分の好きな作家の本しか読みませんでした。
興味の無い人のエッセイほど面白く無い読み物は無いので、
あまり好んでは読まずにいたのですが、
興味がある・無し、ではなく、
その人のエッセイが面白いか・そうでないか、
の違いだ、ということに、この本を読んで気づきました。
私は、近藤さんのことは知りませんでしたが、
彼の文章は、とてもそそられました。
時々、俺って、すごいんだぜ!という自慢臭がプンプン漂うものや、
逆に、卑下しすぎていて、同情するのも嫌になるほどのエッセイに出くわすこともありますが、
(って、私こそ、何様発言ですね。自分のことを棚にあげまくって、すみません!)
でも、この近藤さんの文章からは、そういった、余分な+アルファがありません。
気持ちよく無駄がそぎ落とされているのです。
オーストラリアの宿の主人、マークがいつも流していた曲が、
ジャック・ジョンソンだったそうで、
エッセイの中にも何度か、ジャックの曲のことが書かれているのですが、
近藤さんの文章からも、ジャックのような、程よい力の抜け加減の心地よさがありました。
でも、ゆるすぎず、時には、プッと笑いだしてしまいそうになる面白さもあり、
読んでいてとても楽しいのです。
だからと言って、旅そのものが、全てハッピーなものか、と言ったら、
もちろん、苦労も絶えないのだけれど、
でも、本全体に流れる空気は、とても幸せ&楽しそうな雰囲気です。
彼らは、5年間の旅生活を送り、「旅が暮らしになる」ことを確信したそうです。
と言いつつも、彼らの旅を簡単に真似することはできません。
でも、彼らの生き方を見ていると、人生って悪くないな、と思えてきます。
旅には、出会いもあれば、同じ数だけ別れもあります。
終わりがあるから、色々なことは輝いているのかな、ということと、
なんでも全てを知ろうとすることは不可能で、
自分なりの器の大きさで、取捨選択しながら生きていくことの、
「現実」が、この本の中にはあったように感じました。
不思議なのだけれど、日本でフツーの日々を送る私以上に、
近藤夫妻は、「現実」というものをしっかりと受け止めているように感じられました。
なんだか、わけのわからない感想を書いてしまいましたが、
一言でいえば、ワクワク楽しい旅のお話で、
ページをめくるのが、本当に楽しかった!
この本は、5年間の旅の1年だけが収められているのですが、
その続きは、ミシマ社のブログ「遊牧夫婦」で読むことができます。
気になる方は、本と合わせて、読んでみてください♪