19『本当はちがうんだ日記』
2010年3月22日
紀伊國屋書店のスタッフの皆さんが選んだ文庫、
「紀選文庫(きせんぶんこ)」が、先日、発表されました。
★紀選文庫の特別サイトはコチラ↓
http://www.kinokuniya.co.jp/01f/event/kisen/koikuchi.html
心から本が大好きな人々が選んだ本がずらりと並んでいます。
さらに、文庫ですので、すでに私が読んだことのある本もたくさんありました。
それらが皆、面白い本ばかりで、期待値が上がらないわけがありません。
今週、来週の月曜13:45〜の『ユキコレ(grace内コーナー)』は、
紀選文庫の中から本をご紹介します。
今日ご紹介するのは、
『本当はちがうんだ日記/穂村弘(ほむらひろし)(集英社文庫)』です。
穂村さんが、ご自身の日常を綴ったエッセイ、まさに日記です。
この穂村さん、かなり個人的な世界観を確立している方です。
『本当は違うんだ日記』というタイトルからも、
相当、濃そうな人だというのがおわかりいただけるのでは?
穂村さんは、基本的に、暗く、落ち込みやすく、マイナス思考です。(笑)
でも、時々、とても前向きかつ行動的になることもあります。
例えば、素敵な自分になるため、苦手なエスプレッソを飲み続けます。
でも、何度飲んでも苦いわけです。
その理由は、自分が素敵じゃないから苦いんだと、彼は思います。
それなら、自分が素敵になればいいんだ!と、なぜか?自己啓発本を何冊も読みます。
でも、それでも素敵になれなかった彼は、
哲学、心理学、神秘思想などに関する本にまで手を出してしまいます。
果たして、彼は、素敵になって、エスプレッソを飲めるようになったのでしょうか?
という感じ。
どうです?これだけでも十分凄すぎますよね…。
この続きは、是非、本を読んでみてください。
ちなみに、この「エスプレッソ」の話は、1つ目のお話。
この本には、52のエピソードが詰まっています。
普通なら、そこまで考えないよ〜というような細かいことを気にしたり、
かと思えば、普段は口には出したことはないけれど、わかるな、と思えることが書かれていたり、
おぉ!すごいなあ、と尊敬するところがあったりと、
基本的には、暗くてネチネチしている感じなのだけど(笑)、
それだけじゃない、幅の広さを感じました。だから、読んでいて、面白いのですが。
って、私、なんか、感想が偉そうですね・・・。失礼!
でも、ある意味、ちょっとうらやましさも感じます。
ここまで、自分の変なところや嫌な部分を吐き出せるのは、逆に羨ましい。
あれ、また毒吐いちゃってます?私。(笑)
話を変えましょう。
ちょっとウルウルきたエピソードもいくつかありました。
彼は「素敵な人」になりたいと思い続けていますが、
「エスプレッソが飲めるような素敵な人」ではなく、
人として、本当に素敵な人に出会うエピソードがあります。
悪天候の中、何時間もタクシー待ちをしていた時のエピソードです。
穂村さんは、自分のことしか考えていなかったのに、
自分の前に並んでいたお爺さんは、穂村さんの後ろに並んでいた、
赤ちゃんを抱いた女性を先にタクシーに乗せたのです。
そして、そのあとのお爺さんの行動が素晴らしく、
穂村さんは打ちのめされたのでした。
どんな行動を取ったのか?
それは、本を読んでたしかめて下さい。
私は、このエピソードに本当に感動して、自分の日々の言動を振り返り、
あまりにも器の小さすぎる自分が恥ずかしくなって、
誰かにそのことを知られて、顔がかーっと真っ赤になっていくようでした。
それは、穂村さんも同じだったようですが・・・。
『本当はちがうんだ日記』は、穂村さんの日常が書かれた本ですが、
どこか、自分自身の内面を覗いているような感覚でした。
すきま時間にさらっと読めますので、普段、読書をしない方にもおすすめです!