10『廃墟に乞う』
2010年2月8日
先日、第142回芥川賞・直木賞の受賞作が発表され、
芥川賞は11年ぶりに「該当作なし」、
直木賞は佐々木譲(ささき・じょう)さんの「廃墟に乞う」と
白石一文(しらいし・かずふみ)さんの「ほかならぬ人へ」が受賞しました。
受賞作をお読みになった方も多いと思いますが、私も、ついに読みました。
まず読んだのは、佐々木譲さんの『廃墟に乞う』です。
主人公は、休職中の警官の仙道です。
ある事件をきっかけに心に傷を負い、自宅療養中の仙道は、
過去に関わった様々な人から、個人的に捜査を依頼されます。
ただ、休職中の仙道は、警察手帳も拳銃も持てず、捜査権はありません。
仙道は、いったいのどのような捜査をしていくのか?
そして、仙道は、現場復帰することはできるのか?
といった内容の連作短編集です。
事件1つにつき、1話です。
佐々木さんの警察小説というと、北海道の警察のお話が多いのですが、
今回も北海道警の刑事が主人公です。ただ、休職中ですが。
でも、休職中だからこそ、自由に動き回れるという利点はあります。
この小説では、その点を利用し、扱う事件も広く北海道内となっています。
北海道という、ある種独特な地域の中で繰り広げらる様々な事件には、
北海道ならではのものもあれば、
他の地域、それこそ富山に置き換えることができるものもあり、
現代が抱える問題がギュッと凝縮されているようにも思いました。
主人公の仙道は、休職中ということで、一歩離れたところから事件を見つめます。
また、心の病にかかっているため、無理をしないようにしようとも思っている。
でも、事件の核心に迫っていくときは、さすが、刑事!
心のすきまに、さりげなくするするっと入っていき、本音を吐かせる。
その一連の流れからも休職前の仕事っぷりが想像できます。
また、休職中にもかかわらず、
様々な人から「助けてほしい」と電話がかかってくることからも、
人望があることがわかります。
確かに、仙道の導き方は、うまいのです。心を開かせる力がある。
もし、私が仙道から質問されたら、
知らないうちに誘導されて、喋ってしまいそうですもん。
そして、困った時には、電話をしてしまいそうです。
さて、仙道は、どのように本音を吐かせるのか、
そして、事件解決のために、どのようなお手伝いをするのでしょうか?
知りたい方は、是非、本を読んでみてね〜。