ゆきれぽ

2025年3月19日

  • #本
  • NEW

『C線上のアリア』

この記事をシェアする

X LINE facebook

今日ご紹介する本は、湊かなえさんの新作です。
ってことはイヤミス?と思われる方もいるかもしれませんが、今回は違います。

私は読んだ後、イヤな気持ちになるどころか、光を感じました。
とにかく面白くて、最後までノンストップで読んでしまったほどです。

『C線上のアリア』
湊かなえ
朝日新聞出版

主人公は、中学生の時に両親を事故で亡くし、叔母に引き取られた美佐です。

それから30年以上が経ち、結婚し叔母と離れて暮らしていた美佐のもとに、
役場から叔母に認知症の症状が見られるから様子を見に行ってほしいと連絡がきます。

久しぶりに叔母の家へ向かってみれば、
美しかったはずの家はゴミ屋敷になっていたのでした。
また叔母にもかつての面影はなく、美佐はショックを受けます。

でもまずは、この荒れ果てた家をどうにかしなければと片づけを始めます。
ゴミに混ざって次から次へと色々なものが出てくるのですが、
その中にかつての恋人から借りた本を見つけ、美佐はその本を返しにいくことにします。

このあと、美佐の高校時代や、叔母の若かりし頃の話も加わって、
物語はどんどん面白くなっていきます。

ちなみに、この物語は介護ミステリです。
介護がミステリにどう絡んでいくのかは、ぜひ本を読んで確かめて頂きたいのですが、
義母の介護をする女性など、この物語には様々な女性たちが出てきます。
共通しているのは、みんな普通の女性ということです。
うーん。普通の人たちの物語って退屈そう…と思う方もいるかもしれません。
それが面白いのです。これこそが湊マジックです。

それに、次々と気になることが出てくるんですよ。
ゴミ屋敷の片づけ中に見つかった開かずの金庫とか、
友人から「お互いの家の家事を交換してやってみない?」と言われたりとか、
現実を見ようとしない夫とか、
久しぶりに会ったかつての恋人とか。
この先どうなるの?と思うことが次々に出てきて、
ページをめくる手をとめられなくなります。

この小説は、大人世代の皆さんにおすすめの一冊です。
特に妙齢の女性は共感できることがたくさんあるのではないかしら。
物語の女性たちの心の声にぜひ耳を傾けてみてください。
また、イヤミスはちょっと苦手という方にも読んで頂きたいです。
それから、この作品にはある有名な小説が出てきますので、そのファンの方もぜひ!
ヒントは赤と緑の表紙です。あと主人公の美佐はビートルズが好きです。わかったかな?
私も久しぶりの赤と緑のあの本を読んでみたくなりました。
確か上下巻とも家にあるはず。