『小説』
2024年12月11日
毎週ラジオで本の紹介をしているため、初めてお会いした方からは
「田島さんって本が好きなんでしょ?」とよく言われます。
「田島=本が好き」と思われているのはとても嬉しいことです。
しかし、「本」と言っても様々なジャンルがあります。
例えば、小説、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス書、図録、詩集など。
また、小説の中にもミステリ、恋愛、ファンタジー、歴史、SFなどがあります。
私はなるべく様々なジャンルの本を読むように心がけていますが、
一番よく読んでいるのは「小説」です。
私は昔から物語が好きなのです。
今日ご紹介する本も小説なのですが、本好きの主人公の気持ちがわかり過ぎて、
いいと思う箇所に付箋を貼っていったら付箋だらけになってしまい、
マーカーをひきすぎて、どこが大事かわからない教科書の様になってしまいました。(笑)
さて、今日ご紹介する作品は、『小説』です。
正確には『小説』という小説です。
『小説』
野﨑まど
講談社
主人公は、内海(うつみ)という男性です。
小説を読み始めたのは五歳の時。『走れメロス』がきっかけでした。
最初は父親を喜ばせたくて父が好みそうな本を選んで読んでいましたが、
すぐに自分の好みの作品、小説を読むようになります。
すっかり小説好きになった内海は、
小学六年生の時に、同級生の外崎(とのさき)と出会います。
それまで本を読んだことがなかった外崎ですが、
内海から渡された一冊の小説から本が好きになり、二人は友人になります。
そんなある日、学校に隣接した古くて大きな屋敷、
その名もモジャ屋敷に小説家の先生が住んでいることを知った二人は、
居ても立っても居られず屋敷にもぐりこみます。
そこで髪と髭が伸び放題の通称、髭先生と出会うのですが、
怒られるどころか、屋敷の中の書庫への出入りを許されます。
そして二人は毎日のようにモジャ屋敷で本を読んで過ごすようになり、
ますます小説にはまっていきます。
しかし、このお屋敷にはある秘密があったのでした。
この続きは、ぜひ本を読んでお確かめください。
***
面白かったです!
物語の1ページ目から、いったい何の話よ?と思い、
2ページ目に入って、ますます意味がわからなくなり、
ようやく話しが落ち着いてきたと思ったら、
まったく想像していない展開が待っていて、
私は一体どこに連れていかれるの?
と先が見えないドキドキの読書体験となりました。
また、物語として面白かっただけでなく、
「小説」そのものについても考えさせられました。
主人公の内海は小説を読むのが大好きですが、
ただ読んでいるだけではなく、その小説について思いを巡らすようになります。
そもそも小説とは何なのか。
なぜ小説を読むのか。
小説をただ読むだけでは駄目なのか。
内海は、これらの問いに深く向き合っていくことになります。
果たしてどんな答えと出合うのでしょう。
文字を目で追いながら私自身も内海と一緒に答えを探している気分でした。
そして本を読み終えた時、やはり私は小説が好きだ、
というか、さらに好きになったと思いました。
また、この作品には芥川龍之介をはじめ、
実在した作家の作品もたくさん登場するのですが、
一度それらの作品を読んでから、再びこの『小説』を読んでみたいとも思いました。
それから初回封入特典の掌編も面白かったです。
明文堂書店 高岡射水店の野口さんに確認したところ、
今ならまだ特典付きがあるそうですので、お読みになりたい方はお早めに。