『人魚が逃げた』
2024年12月4日
あなたは、『人魚姫』の物語をどう思いますか?
有名なアンデルセンの童話ですので、
本を読んだことが無くても、どんな話かはわかりますよね?
私は子どもの頃に読んだ絵本の中でも特に印象に残っています。
だって、お姫様の物語と言えば、
辛いことがあっても最後は王子様と結ばれてめでたしめでたし♪
とほぼ決まっているはずなのに、
人魚姫は、王子様に勘違いされまま自分は泡となって消えてしまうのですよ。
子どもの頃はそれが衝撃的でした。
だから、ディズニーの『リトル・マーメイド』を見た時には、
話が全然違う!と別の意味での衝撃を受けました。(笑)
でもディズニー版は、あれはあれで好きですが。
さて、今日ご紹介する物語は、その「人魚」が逃げたというお話です。
『人魚が逃げた』
青山 美智子
PHP研究所
青山さんの作品は私も好きなので、ラジオでもよく紹介しています。
そして、書店員さんにもファンが多く、
書店員が選ぶ本屋大賞には、これまで4年連続でノミネートされています。
『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)2021年本屋大賞2位
『赤と青とエスキース』(PHP研究所)2022年2位
『月の立つ林で』(ポプラ社)2023年5位
『リカバリー・カバヒコ』(光文社)2024年7位
ちなみに、これらは全てラジオでも紹介してきました。
本のタイトルをクリックすると、私の本紹介ブログが読めます。
『人魚が逃げた』もきっと来年ノミネートされると思います!
書店員と言えば、この方も青山さんの作品がお好きです。
明文堂書店 高岡射水店の書籍担当 野口さん。
毎月第1週は、明文堂書店とのコラボ回です。
『人魚が逃げた』をオススメしたくなる気持ち、私も良く分かります。
まず、本の表紙から心惹かれます。
ファンの方ならすぐにわかると思うのですが、
ミニチュア写真家・見立て作家の田中達也さん作品が使われています。
以前、田中さんの展覧会が氷見でありましたので、見に行った方もいるのでは。
私も彼のファンで、作品集も持っています。
また、田中さんのファンの方は、表紙だけでなく本を読んでいる最中にも
「おっ!」と思う瞬間がやってきますので、どうぞお楽しみに!
さて、『人魚が逃げた』は、どんな物語なのかというと、
5章からなる連作短編集です。
ある3月の週末、SNS上で「人魚が逃げた」という言葉がトレンド入りします。
銀座の街で、テレビ番組の街角インタビューに
「王子」と名乗る男性が登場します。
頭に冠を載せ、見た目も王子そのものでインパクト大なのに、
「僕の人魚が、いなくなってしまって……逃げたんだ。この場所に」
なんて言うもんだから、一瞬で時の人になります。
王子がテレビに出た後、SNS上では、
「どうやら銀座に人魚が逃げて、王子が探しているらしいよ」
という噂が広がります。
人魚ってどうやって逃げるの?王子って何者?
とSNSでも銀座の街でも人魚と王子の話題で持ちきりです。
そんな中、それぞれに「人生の節目」を迎えた5人が、
銀座を訪れ、噂の王子と遭遇します。
まずは、12歳年上の女性と交際中の元タレントの会社員が王子に会います。
彼は、交際中の彼女とのことで悩んでいます。
元タレントの彼は、王子が芝居の稽古をしているのだと思い、
その設定にあわせて自分も演じながら話をし、
その会話の中で大切なことに気付かされます。
その後は、娘と買い物中の主婦、妻に離婚された男性、
文学賞の選考結果を待つ作家などが王子と偶然出会います。
皆それぞれに何かしら抱えているものがあって、悩んでいます。
(でも、それが実は思い込みだったりするのですが…)
また、主人公たちは『人魚姫』について
確かこんな物語だったよな、と思い出すのですが、
人によって解釈が異なるのが面白かったです。
その人が今どんな状況にあるかで、気になるポイントも変わるのですよね。
彼らは、王子と出会うことで何かしらの気付きを得ますが、
王子が何か素晴らしいアドバイスをするわけではありません。
なんならたまたま出会って、ちょっと関わる程度です。
でもそれがいいのです。押しつけがましくなくて。
人にこうでしょ!と言われるより、
自分で気付く方が心を動かされるものじゃないですか?
それこそ青山さんの作品は、毎回読む度、はっとさせられるセリフに出合えます。
ぜひあなたもこの本を読みながら、その瞬間を楽しんでください。
ところで、王子は逃げた人魚と再会できるのでしょうか。
そもそも王子とは誰なのか。
続きは本の世界でお確かめください。
最後の最後まで楽しませてもらえる一冊です。
また、クリスマス前の今の時期にもぴったりです。
あなたの大切な方のことを考えながら読んでみてください。
では、ここで、この本を大プッシュしている
明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介します。
1章ごとに幸せのため息。
はじめは最初から二度目は最後から、
それぞれ表と裏の世界を覗き見しているようで楽しく読み終えました。
物語の良さを実感できます!
***
そう、この本は最後まで読んだら、もう一度読みたくなります。
これから富山は一段と寒さが厳しい日々になりそうですが、
この本を読めばきっと心は温まるはずです。
『人魚が逃げた』は、富山県内の明文堂書店全店の
「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にもありますので、
ぜひチェックしてみてね♪
◎明文堂書店のサイトは コチラ