66『無理』
2009年11月28日
私の大好きな作家、奥田英朗さんの小説『無理』を読みました。
『最悪』『邪魔』に続く、群像劇です。
舞台は、町村合併でできた人口12万人の地方都市、ゆめの市。
主な登場人物は、この街で暮らす5人です。
彼ら5人が交互に登場し、彼らの視点で描かれています。
同じ街で暮らす、様々な年代&立場の男女。
彼らに共通しているのは、ゆめの市に暮らしていることと、
色々うまくいかず、不満を抱えているということ。
はっきり言って、この5人は、皆、勝手です。
自分の都合で物事を捉え、無意識の内に自分だけは特別と思いながら、
他の人をさげすみ、生きています。
そして、うまくいかないことがあると、人のせいにしたり、
自分で自分に言い訳したり、勝手に一人でイライラしたり。
読んでいるこちらまで気分が悪くなります。
というのも、どの人も、ちょっとずつ、自分とかぶるから。
あ、私にもこういうずるさがあるなあとか、
ムカつくけど、同じことが起きたら私もしちゃうかもとか、
悔しいけれど、わかってしまうんですよ、彼らの行動が、気持ちが。
言ってみれば、普通なんです、彼らは。
でも、読みながら、なんかイライラするなあと思いながらも、
本を閉じようとは全く思いませんでした。
どうしようもない彼らの、その先が気になって仕方なかったから。
まったく関係ない5人が、少しずつ、同じ街の中で絡んでいき、
最後は、まったく想像していなかった結末が待っていました。
奥田先生の作品は、登場人物が、とてもリアルなのが私は大好きなのですが、
今回も、どこにでもいそうな人ばかりでした。
それこそ、この中の1人が自分であってもおかしくないくらい。
今週1週間は、私は、体調を崩したこともあり、夜の間はずっと家にいましたが、
この本を読んでいたので、家にいながら、たくさんの人と会っているような感じでした。
そういえば、私、本の内容をほとんど紹介していませんね…。
でも、何も知らずに読んだ方が、面白いと思います。
人と会う時、事前情報があると、そういう目で見てしまうでしょ?
そういうことは一切無しで、あなた自身の判断で、ゆめの市の人たちに会ってみてください。
『無理』は、まるで、あなたをうつす鏡のような本です。
さ〜って、鏡には、あなたはどのようにうつるのかしら?