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『赤と青のガウン オックスフォード留学記』

2024年6月12日

今、日本のプリンセスの本が10万部のベストセラーになっているのをご存じですか。
それはこちら。

『赤と青のガウン オックスフォード留学記』
彬子女王(あきこじょおう)
PHP文庫

実はこの本が発売されたのは2015年です。
9年前の本がなぜ今話題になっているのかというと、
きっかけは、去年5月、X(旧Twitter)に
この本が面白いと投稿されたことだったそうです。

そして今年4月に文庫が発売され、今や大ブームになっているというわけです。

ちなみに、単行本が市場に出回っていなかったことから、
なんと彬子さまみずから出版社に連絡して、
文庫版として発売されることになったのだとか。
彬子さまの行動力すごい!

*

さて、この本は、「ヒゲの殿下」として親しまれた
三笠宮寛仁さまのご長女、彬子さまの英国留学記です。

彬子さまは、オックスフォード大学マートン・コレッジに
2001年9月から1年間と、2004年9月から5年間留学され、
女性皇族として初の博士号を取得されました。専攻は日本美術です。

本のタイトルの「赤と青のガウン」は、
オックスフォード大学の博士課程修了者だけが袖を通せるガウンのことです。

この本には、そのガウンに袖を通すまでの留学生活の日々が綴られています。

プリンセスの留学と聞くと、
一般の方とはだいぶ違うのだろうなあ、と思われるかもしれませんが、
この留学記を読むと、いい意味で裏切られます。

確かに一般の方とは異なるところもあります。

例えば、プリンセスを守る「側衛(そくえい)」と言われる方が常に側にいたり、
パスポートが一般の方とは異なっていたりします。
また、エリザベス女王にアフターヌーン・ティに招かれたお話などは、
プリンセスならではです。

ちなみに、留学中は側衛がいなかったため、
彬子さまは、オックスフォードで生まれて初めて一人で街を歩かれたのだとか。

そういったプリンセスらしい日常だけでなく、
この留学記では、格安航空で移動したり、自炊をしたりと
彬子さまの庶民的な一面も垣間見ることができます。

格安航空を使ったときには、日本のプリンセスだと思われず、
スムーズにチェックインができなかったのだとか。

他にも電車で爆睡してしまった失敗談などもあり、
読めば読むほど、親近感が湧いていきました。

個人的には、彬子さまが専攻されていた日本美術のエピソードが好きです。
彬子さまが日本の大学ではなく
オックスフォードで日本美術を学ばれた理由や
ボランティア・スタッフとして出入りしていた大英博物館の裏側など、
アートに関するお話がどれも面白く、また勉強にもなりました。
実際、彬子さまのお好きな分野ということもあり、
文章もよりイキイキとしていたように感じられました。

他にも、お父様をはじめとした周りの方々とのエピソードや、勉強の大変さなど、
いろいろな意味で興味深い一冊だったのですが、
この本の一番の魅力は、なんといっても文章の面白さです。
美しく品のある知的な文章でありながらも堅苦しくありません。
そしてとても読みやすいのです。

彬子さまの飾らない素直なお人柄がにじみ出た、とても素敵な留学記でした。

yukikotajima 11:40 am