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『水車小屋のネネ』

2024年3月6日

先週よりちょっと優しい田島です。(笑)
なぜって、いろいろな人の優しさに触れたからです。
と言っても、本の世界でですが。

今日ご紹介する本は、こちら。

『水車小屋のネネ』
津村記久子
毎日新聞出版

毎月第一週は、明文堂書店とのコラボ回!
高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本の紹介です。

この本は、第59回谷崎潤一郎賞を受賞したほか、
4月10日に発表される本屋大賞にノミネートされています。

ノミネート作を全部読んだわけではないけれど、
私の中では本屋大賞決定です。(笑)
だって、本当に良かったのですもの!

500ページ近くもある長編で、
大きな事件が起こるわけでも
驚くべき事実が明らかになるわけでもないのに、
全く飽きることはなく、
それどころか残りのページが少なくなった時には、
もっとこの世界にいたいと思ってしまった程です。

『水車小屋のネネ』は、二人の姉妹を中心に、
姉妹が出会った人々の40年が描かれた長編小説です。

物語は、1981年から2021年まで10年刻みで進んでいきます。

第一話の1981年では、姉の理佐は18歳、妹の律は8歳です。
姉妹は、身勝手な親から離れて二人で生きることに決め、
姉はおそば屋さんの仕事を見つけます。
それも「鳥の世話じゃっかん」とある求人を。

そのおそば屋さんは、山間の町で夫婦が営んでいるのですが、
そば粉は水車小屋の石臼で挽いています。
そして、その小屋には、そば作りに欠かせない鳥が住んでいます。

まさしくの本のタイトルの水車小屋のネネです。

ネネは、ヨウムという鳥です。
オウムではありません。
ヨウムは、人間の三歳児くらいの知能があり、
とてもかしこく、ものまねが得意で、おしゃべりをします。

私は富山市ファミリーパークで見たことがあります。
灰色で尾の部分が赤い鳥、あなたも見たことはありませんか?

実はこのヨウムのネネが「しゃべり」で、そばづくりを手伝っていたのでした。

そして、求人の条件が、おそば屋さんの仕事のほかに、
ネネの世話もしてほしいというものでした。

ネネは、おしゃべりも歌も大好きで、
ラジオから好きな曲がかかると一緒に歌うような陽気な鳥で、
姉妹ともすぐに仲良くなります。

高校を卒業したての18歳の姉と8歳の妹の二人暮らしですから
町の人たちはもちろん心配するわけですが、
おそば屋さんのご夫婦をはじめ、様々な方たち(ネネも含む)が
程よい距離感で見守りながら支えていきます。

そして、成長した姉妹も誰かを支え、
その誰かもまた誰かを支えてと、
それぞれ助け合っていきます。

だからと言って、押しつけがましさはありません。
著者の津村さんは、登場人物たちに無理をさせないようにしたそうです。

その程よい距離感がとても心地良かったです。

物語は、姉の理佐の視点ではじまり、
第二話は、妹の律と、町に移り住んできた青年の視点で、
その後は、律の視点で進んでいきます。

姉妹が成長するにつれて、
関わる人たちも少しずつ入れ替わっていくのですが、
ずっと変わらずそばにいるのが、ヨウムのネネです。
なんとヨウムは五十年くらい生きると言われているそうです。

このネネがいいキャラで、
私もヨウムを飼いたいと思ってしまったくらいです。
今、田島の推しは?と聞かれたら
「ネネ」と答えるくらいにはまっています。

物語は10年刻みで進んでいくわけですが、
水車小屋ではいつもラジオが流れていて、
時代ごとの曲もたくさん出てきます。

ネネはラジオが大好きです。
ラジオの仕事をしている私からしたら嬉しすぎます。
私のリスナーにもヨウムはいたりするのかなあ。

ラジオも物語のいいアクセントになっていますので、
普段ラジオを聴いている皆さんには、ぜひ読んでいただきたいわ。

ではここで、この本を大プッシュされている
明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介しましょう。

理佐と律、ふたりの姉妹と、おしゃべりするヨウムのネネ。
それぞれが生きた時代と、自分の人生を重ね合わせて、
その時々で、たくさんの優しい人たちに
支えられてきたことを思い出しました。
全国の書店員が選んだ、本屋大賞ノミネート作、10作品の一冊です。
ぜひ、お読みください!

そうなんですよ。
私も思い出しました。
これまでの人生、多くの人たちに支えられてきたことを。
だから、読んだ後に満たされた気持ちになったのかもな。

ある登場人物がこんなことを言っています。

「自分はおそらく、これまでに出会った
あらゆる人々の良心でできあがっている」

この本を読むと、きっと同じことを感じると思います。
そして、この本もその良心のひとつになるはず。

今日ご紹介した『水車小屋のネネ』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にあります。
ぜひお手に取ってみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 12:48 pm