『クマにあったらどうするか』
2023年11月22日
この秋は、富山をはじめ全国的にクマの出没が急増しています。
それも最近は市街地でもクマが出没していますので、より注意が必要です。
また、今年はクマのニュースに合わせて、
クマ対策が報じられることも多いように感じます。
クマよけの鈴を買ったり、外を歩く際にはラジオを流したりしている方もいるのでは。
できればクマに遭遇しないのが一番だと思うのですが、
もしクマにあってしまったら、どうしたらいいのでしょうか。
そもそもあなたは「クマ」についてどれくらい知っていますか。
相手のことを知らないと怖さも増すものです。
あなたも一度、クマについて学んでみませんか。
今日ご紹介する本は、クマについて書かれた本です。
『クマにあったらどうするか
─アイヌ民族最後の狩人 姉崎等』
語り手:姉崎等(あねざき・ひとし)
聞き書き:片山龍峯 (かたやま・たつみね)
ちくま文庫
この本は、2002年に刊行され、2014年に文庫化されたのですが、
クマの出没が相次いでいる今年、再び売れているのだとか。
本の装丁を見ると、柔らかなタッチのクマの親子のイラストが描かれているので、
クマが主人公の絵本かしら?と思ってしまいそうになりますが、そうではありません。
本の帯には、アイヌ最強のクマ撃ちが残した最高のクマの教科書とあります。
(ちなみに、クマはヒグマのことです)
そのクマ撃ちというのが本のタイトルにもなっている
アイヌ民族最後のクマ撃ち猟師の姉崎等さんです。
姉崎さんは、「クマの心がわからなければクマは獲れない」と言い、
クマを師匠と呼び、実際にクマを追って山の歩き方やクマの行動を学んだそうです。
そして、人間としての視点ではなく、
クマならきっとこう考えるはずだとクマの視点になって考えます。
つまり、クマになりきっているのです。
クマの視点になると、クマが人間をよく観察していて、知恵があることがわかります。
例えば、クマは人間をよく観察していて、
自分たちの姿を見せないようにしていたり、
雪山で滑り台を作って遊んだりすることもあるそうです。
他にもクマが好きなものや、逆に嫌いなものなど、
この本を通して、クマの本当の姿を知ることができます。
ちなみに、クマが嫌いなものの一つは、「ペットボトルの音」だそうです。
空のペットボトルを押して出る音をクマは嫌うそうですよ。
また、一番知りたい、クマにあったときの対処法も載っています。それもたくさん。
詳しくは本を読んでお確かめ頂きたいのですが、
一番やってはいけないことだけ紹介しておきましょう。
それは「背中を見せて走って逃げること」だそうです。
クマは至近距離で人と出くわすと、
クマのほうが逆に襲われたと思って襲ってくるのだとか。
そもそも人間に姿を見せないようにしているはずのクマが
なぜ姿を見せるようになってしまったのでしょうか。
クマの気持ちになっている姉崎さんの話を聞いていると、
自分自身もクマ目線になってくるもので、
クマとして人間を見てみると、
人間は本当に勝手で、そして怖い存在に思えてきます。
とは言え、人としてクマを見ると、やはり怖いし、遭遇したくはありません。
でも、この本を読んだ後は、クマの印象が変わりました。
相手を知らないと、それだけで怖さや不安が増してしまうものです。
本の帯に「知ったかぶりが1番怖い」とあるのですが、
本当にその通りだなと思いました。
あなたもクマを知り尽くした姉崎さんの話に耳を傾けてみませんか。
ちなみに、この本は姉崎さんの語りがメインですが、
聞き手である映像作家の片山さんのおかげで、大変読みやすくなっています。
まるで良質なドキュメンタリーを見ているかのような一冊でもありました。
なお、この本はクマを知るにはいいと思いますが、
クマ対策に関しては、この本だけでなく、
必ず最新の情報も確認するようにしてください。