『八月の銀の雪』
2023年8月2日
毎日毎日本当に暑いですね。
色々な暑さ対策がありますが、
雪の降る冬を思い出してみるのはいかがでしょう。
今日ご紹介する本は、タイトルを見ただけで暑さが和らぎそうですよー。
『八月の銀の雪』
伊与原新(いよはら・しん)
新潮文庫
今日は8月の第1水曜日ですので、
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本です。
第164回 直木賞候補となったほか、
2021年に本屋大賞にノミネートされた話題作ですので、
すでにお読みの方もいるのでは。
まずは、野口さんのコメントです。
科学の不思議や、真実が、主人公たちの人生に寄り添い、
そっと背中を押してくれる物語です。
小説と科学が融合するんだ〜と、ひたすら感動しました。
私は、本のタイトルを見た時、暑い夏に銀色の雪が降る
ファンタジーなのかなあと思ったのですが、
読んでみたら全然違いました。
野口さんがおっしゃっている通り、
地球や自然、動物などの科学にまつわる物語でした。
でも科学と言っても決して難しいお話ではありませんので、
安心してお読みください。
ちなみに「銀の雪」は実際に地球のある場所で降っているそうですよ!
『八月の銀の雪』は、5つのお話からなる短編集です。
どのお話の主人公も人生がうまくいっていません。
ですが、新たな人との出会いをきっかけに、
くすぶっていた日々に変化が生じます。
私が一番印象に残ったのは、
2歳の娘を育てるシングルマザーの物語「海へ還る日」です。
シングルマザーの「わたし」は、
満員電車の中で、ぐずる娘を抱っこしながら、
まわりの乗客たちに「すみません」と謝り続けています。
そして、もう限界…と思ったとき、ある年上女性が席を譲ってくれます。
その女性は、ぐずる娘にクジラのシールを渡して、
博物館で開催中の「海の哺乳類展」に行くことを提案します。
「わたし」は、街なかで出会う人は、
自分も含め全員がつまらなそうに見え、
娘の人生もきっと幸せにはなれないと思っていましたが、
博物館でクジラやイルカの展示を見たり話を聞いたりする中で、
少しずつ世界の見え方が変わっていきます。
ほかにも、就職活動がうまくいかない学生や、夢破れた男性など、
どのお話の主人公も満たされない思いを抱えているのですが、
それぞれ、ある人との出会いによって、心に変化が生じます。
と同時に読者である私の心も軽くなって、
よし私も頑張るか、と前向きな気持ちになれます。
自分のことを知らない他人のほうが、
正直な気持ちを吐き出せることって、ありませんか。
また、全然関係ないと思っていたことから、
影響を受けることもありますよね。
それこそ、この本を読むことで、
きっと何かしらの影響をあなたも受けるのではないかしら。それもいい影響を。
この夏じっくり読んでみてください。
今年6月に文庫化されて、お求めやすくなっていますよ〜。
今日ご紹介した『八月の銀の雪』は、
富山県内の明文堂書店全店の「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひチェックしてみてください。
◎明文堂書店のサイトは コチラ
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