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『やさしい猫』

2023年6月7日

最近、「入管難民法の改正案」に関するニュースをよく見聞きしませんか。
ここのところ、連日のように報じられていますが、
ついに、きょうの参議院本会議で、法務大臣に対する問責決議案が否決され、
与党は、あさっての本会議で可決、成立させる方針です。

入管難民法改正案は、強制退去を命じられても
送還を拒む外国人の退去を進め、入管施設への長期収容を解消するのが狙いです。

問題が解決されるならいいのでは、と思いそうですが、
この改正案に反対する人たちもいます。
送還ではなく、保護をしてほしいと。

この入管法について、あなたはどれくらいご存じでしょうか。
正直なところ詳しいことはよくわからない、という方もいるのでは。

恥ずかしながら、私もそんな一人でした。
でも、この本を読んだあとは入管関連のニュースが
決して他人事とは思えなくなりました。

『やさしい猫』
中島京子
中央公論新社

2010年に『小さいおうち』で直木賞を受賞された中島京子さんの話題作です。
2021年に発売され、吉川英治文学賞をはじめ様々な賞を受賞しました。
ドラマ化も決まり、6月下旬からNHKで放送が始まります。主演は優香さんです。

そして、この『やさしい猫』は、本を愛する
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんのオススメ本です。

まずは、野口さんの推薦コメントをご紹介します。

日本の入管制度や、人権について、とても考えさせられるお話でした。
日常では、聞き慣れない言葉が並び、現実に起きている事を知るきっかけになりました。
現実問題に目を向けながら、家族愛に溢れた力作です。
大人も子供も読んでほしい!!

実際、お子さんでも読みやすいと思います。
というのも、この物語は女子高校生が「きみ」に伝えるために書いたものだからです。
「きみ」が誰なのかは本を読んで確かめていただくとして、
女子高校生のカジュアルな手紙のような文章ですので、
「入管」を扱った小説ですが決して難しくはありません。

簡単にどんなお話なのかご紹介しましょう。

物語の語り手である女子高校生のマヤは、
シングルマザーで保育士のミユキ(ドラマでは優香さんが演じます)と二人暮らしです。
ミユキはある場所でスリランカ人のクマさんと出会い、二人は惹かれあいます。
娘のマヤもクマさんのことが大好きです。

そして色々ありながらも二人は結婚し、
これから家族3人での幸せな日々が始まろうとしていたときに、
クマさんは入管施設に収容され、母国への強制送還を命じられてしまうのです。
しかも、2人は偽装結婚ではないかと疑われてしまいます。
なんとかしてクマさんを救いたいミユキは、
夫の在留特別許可を得るために国を相手に裁判を起こす、という物語です。

この本を読んで私は恥ずかしくなりました。
入管の事を全然知らなかったなと。

外国人というだけで、理不尽な思いをしている人が大勢いるのです。

例えば、アメリカで生まれた子どもはみんなアメリカ人になれるのに、
日本では両親のどちらかが日本国籍じゃないと、日本人にはなれません。
そのため、日本で生まれて日本語しか喋れないのに
生まれたときから非正規滞在になってしまう子どももいるわけです。
そして、ある日、親の母国に行かざるを得なくなってしまう、なんてこともあります。

この物語では、そういった入管に関する様々なことを
語り手のマヤを通して、私たち読者も一緒に学んでいくことになります。

私は、気付いた時にはマヤたち家族を応援する友人の気分でした。

多くの方に読んでいただきたい一冊です!
そして、今月下旬からスタートするドラマもあわせてご覧になってみてください。
私は必ずや見ようと思います。
ちなみに、私は配役を知ったうえでこの物語を読んだので、
すでに一度ドラマを見ている気分です。(笑)

今日ご紹介した中島京子さんの『やさしい猫』は、
富山県内の明文堂書店全店「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にありますので、
ぜひチェックしてみてくださいね。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 2:08 pm