『名探偵のままでいて』
2023年4月12日
今日の「ゆきれぽ」は本の話題です。
本と言えば今日の午後、2023年本屋大賞が発表されました。
今年の大賞受賞作は、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』(講談社)でした。
おめでとうございます〜。
◎本屋大賞の公式サイトは コチラ
この本は、以前ラジオでもご紹介しています。
明文堂書店 富山新庄経堂店 文芸書担当 野口さんの大プッシュ本でした。
野口さんが喜んでいる様子が目に浮かびます!おめでとうございます。
◎田島の本紹介は コチラ
まだお読みでない方はぜひ。
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さて、本に関する賞は他にもいろいろあります。
今日ご紹介する本は、第21回『このミステリーがすごい!』大賞
で大賞を受賞した話題作です。
最近では、テレビドラマ化もされた
新川帆立さんの『元彼の遺言状』が第19回の大賞に選ばれています。
最新の第21回の大賞受賞作はこちら。
『名探偵のままでいて』
小西マサテル
宝島社
著者の小西マサテルさんは、ラジオ番組の構成作家で、
『ナインティナインのオールナイトニッポン』をはじめ、
様々な人気ラジオ番組を担当されているのだとか。
また、小学生の頃からミステリー好きだったそうで、
これまで数多くの作品をお読みになっているそうです。
そのミステリー愛と知識は『名探偵のままでいて』からも感じられました。
様々な古典ミステリーが出てきますので、
マニアの方はニヤリとしてしまうと思います。それも何度も。
でも、全然詳しくない私が読んでも楽しめました。
というのも古典作品が出てきても
登場人物たちのセリフから、どんな作品かわかるのです。
決して読者を置いてけぼりにしません。
それどころかその作品を読んでみたくなるほどです。
彼らの会話もとっても楽しく、さすがラジオの構成作家だと思いました。
会話のテンポが良く、まるで声が聞こえてくるようなのです。
何よりもどのキャラクターもそれぞれに魅力的なので、
いつかドラマ化されると思うわ。
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『名探偵のままでいて』の主人公は、小学校教師の楓(かえで)です。
彼女には一人暮らしをしている祖父がいます。
かつては小学校の校長でしたが、
今はレビー小体型認知症を患い介護を受けています。
この認知症最大の特徴は、幻覚が見えることだそうです。
それもはっきりと見えるのだとか。
楓は祖父の家を訪れる度、
「今日は青い虎が部屋に入ってきた」
といった祖父が見た世界の話を聞いています。
一方で、楓も祖父に身の回りで起きた不思議な出来事の話をするのですが、
謎解きになると、祖父はかつての自分を取り戻したかのように口調も明瞭になります。
物語は六章で構成された連作短編集で、認知症の祖父が様々な謎に挑んでいきます。
それぞれの短編も面白いのですが、全編通しての物語が最高でした。
ラストも、なるほどそうきたか!という納得の終わり方で余韻も含め楽しめました。
ちなみに、著者の小西さんのお父様がレビー小体型認知症を患っていたそうで、
この病気への理解を深めたいという思いから作品を執筆されたそうですよ。
全編を通して優しい雰囲気が漂っているのは、
きっと小西さんのお父様への思いが入っているからなのかもしれません。
ミステリーとしても、また一つの物語としても大変面白い一冊でした。
ドラマ化されたらぜひ見てみたいわ。
祖父のイメージは、草刈正雄さん!
楓は…悩むなあ。誰がいいかなあ。
と勝手に妄想する時間も楽しいものです。(笑)