『映画を早送りで観る人たち』
2022年7月20日
あなたは映画や映像を見る際、早送り再生しながら見ていますか?
私は観ています。それも10年以上前から。
全てが早送りではありませんが、映像によっては1.5倍速で見ています。
なんてことを言うと「けしからん!」と
目くじらを立てる方もいるかもしれませんね。
それで作品を味わったことになるのかとか、
作品の本来の良さが感じられないではないかとか。
よーくわかります。
私もちゃんと見たいと思った作品は倍速にはしませんし、
映画館で映画を見ることも好きです。
映画館で2本連続鑑賞もするほどです。
でも、個人的な好みと関係なく、
流行りの作品や、仕事の上で見る必要のある作品などは、
「資料」として1.5倍速で見ています。いや、消費しています。
こういう場合、「作品を鑑賞する」のではなく
「コンテンツを消費する」と言うそうです。
あなたはどうでしょう?
日々、作品を鑑賞していますか?
それともコンテンツを消費していますか?
今日ご紹介する本は、今年4月に発売され話題になっているこちらです。
『映画を早送りで観る人たち
ファスト映画・ネタバレ——コンテンツ消費の現在形
/稲田豊史(いなだ・とよし)【光文社】】』
著者の稲田さんは、1974年生まれのライター、コラムニスト、編集者で、
映画配給会社に入社後、DVD業界誌の編集長や書籍編集者を経て、
2013年に独立されました。
この本を書くことになったきっかけは、
なぜ倍速視聴する人がいるのかという違和感と疑問からだそうです。
ですが、稲田さん自身も
かつて倍速視聴にどっぷり浸かった時期があったのだとか。
倍速視聴が広がった理由には、3つの背景があるそうです。
まず、作品が多すぎること。
次に、コスパ(コストパフォーマンス)を求める人が増えたこと。
3つめが、セリフですべてを説明する映像作品が増えたこと。
稲田さんは、倍速視聴する人たちに話を聞きながら、その実態に迫っていきます。
その結果、様々なことがわかりました。
詳しくはぜひ本を読んで頂きたいのですが、
大変興味深く面白い一冊でした。
私が印象に残った点をいくつか挙げてみますね。
そもそも40代の私と若者たちでは倍速視聴する理由が違いました。
また、最近、ドラマや映画などを見ている時に感じていた
違和感の理由もわかりました。
例えば、登場人物たちが喋りすぎる問題!
自分の気持ちを実況中継のようにいちいち口に出している
と感じることもあったのですが、
その理由は、わかりやすく説明しないと通じないからなんですって。
例えば、「嫌いと言ってるけど本当は好き」が通じないのだとか。
他にも、見ていて嫌な気分になるものは見たくないそうで、
だから勝つか負けるかわからない「スポーツの試合」は見たくないのだとか。
えーーー!そこが面白いのに!
つまり、「見たいものしか見たくない」ということです。
本や映画やドラマなどの「物語」が好きな私にしてみれば、
もったいない〜!と思ってしまいます。
「共感」できる作品や「癒される」作品も楽しいけれど、
自分とは異なる価値観に触れられることが物語の魅力の一つだと思うから。
ま、これはあくまでも私の意見ですが。
今や、じっくり味わいたい派と、軽く消費したい派の
どちらも楽しめる作品も出てきているそうです。
この本には、そんなドラマの名前も載っていますので、
気になる方は読んでみてください。
というか、大人世代の皆さんにはぜひ読んで頂きたい一冊です。
ほんと面白かった!