『六法推理』
2022年6月15日
日本では3ヶ月ごとにドラマが作られていますが、
医療ものや恋愛ドラマ、青春ドラマのほか、
リーガルミステリ(法廷もの)も人気がありますよね。
原作がベースになっているドラマも多く、
例えば、今放送中の『元彼の遺言状』も原作は新川帆立さんの人気小説です。
小説には、文字だけの本ならではの仕掛けや面白さを味わう作品もあれば、
いつか映像化されるだろうなと思う作品もあります。
今日ご紹介する作品は、近々ドラマ化される気がしてなりません。(笑)
というのも、魅力的な登場人物、他にはない設定、今の時代を象徴するテーマ、
そして、連作短編なので連続ドラマにピッタリです。
(って、私は誰に推薦しているのか。笑)
『六法推理/五十嵐律人(株式会社KADOKAWA)』
五十嵐さんは、2020年に『法廷遊戯』で第62回メフィスト賞を受賞しデビューした、
リーガルミステリ(法廷もの)の旗手として注目の作家さんです。
また、作家でありながら現役の弁護士としてもご活躍です。
ですが、この『六法推理』は弁護士の物語ではありません。
主人公は、大学生です。
とある大学の法学部の四年、古城行成(こじょう・ゆきなり)は、
「無料法律相談所」(通称「無法律」)をひとりで運営しています。
この「無法律」は、大学の課外活動団体「自主ゼミ」の一つで、
法律上のトラブルを抱えた学生の話を聞いて、
法的な観点から無料でアドバイスしています。
そもそも弁護士資格のない法学部の学生が運営していますので、
相談に乗ることはできてもお金を受け取ることはできません。
ある日、古城のもとに経済学部三年の戸賀夏倫(とが・かりん)が訪れます。
彼女は家賃が安いという理由から事故物件に住んでいるのですが、
そこで怪奇現象に悩まされるようになります。
実は彼女が住む部屋では、過去に女子大生が妊娠中に自殺しているのですが、
最近、深夜に赤ん坊の泣き声が聞こえたり、真っ赤な手形が窓についたりと、
奇妙な現象が起きているのです。
これだけのことが起きていたら、まずは「お化け」を疑いそうですが、
彼女は「嫌がらせ」を疑い、「悪意の正体」を探ってほしいと古城に依頼。
古城は法律知識をもとに謎に迫っていきます。
ところが相談者であるはずの戸賀は、
「古城さんの推理は間違っていると思います」と否定してしまうのです。わーお。
しかし、古城の存在も無駄ではありません。
古城の法律知識と戸賀の閃き、二人の力が合わさることで解決へと導かれるのです。
そして、怪奇現象の理由がわかったあとも
戸賀は「無法律」に定期的に顔を見せるようになり、
いつの間にか大学で起きた様々な事件に一緒に挑むようになります。
とは言え二人の性格はまるで正反対です。
感情があまり見えず「血も涙もない法律マシーン」と言われる古城に対し、
戸賀は明るく積極的で閃きにも優れています。
そんな凸凹コンビが5つの事件の真相に迫ります。
事件も「リベンジポルノ」や「毒親問題」など、今の時代が切り取られています。
また、著者の五十嵐さんが
「テンション高めに推理しながら、驚きの余韻とほろ苦さが残る真相を目指した」
とおっしゃる通り、「ほろ苦さ」もこの作品の魅力の一つです。
この「ほろ苦さ」にひたる時間こそ、小説の醍醐味だよなと思いました。
と言いつつも、テレビドラマとして見ても楽しいと思います。
私の映像化予想、密かに結構当たっているのよねー。
さて、ドラマ化されるのはいつかな。(と勝手に期待!)
その前に、まずは、このコンビのシリーズ化を楽しみにしています♪