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46「終の住処」 

2009年8月21日

今年の芥川賞を受賞した作品
磯崎憲一郎(いそざき・けんいちろう)さんの
『終の住処(ついのすみか)』を読みました。
tsuinosumika.jpg

磯崎さんは、会社員として働きながら、執筆活動もしています。

芥川賞を受賞した時の様子を見る限り、
程よく日に焼けた感じと爽やかな笑顔から、
勝手に、作品も明るく爽やかなものだと決め込んでいたのですが、
読み始めてすぐ、
本当に、あの白い歯がまぶしい方が書いたものなのか?
と思ってしまいました。
まるで逆でした。
まぁ、勝手にさわやかイメージを作ったのは、私なのですが。(笑)

主人公は、30歳を過ぎて結婚したものの、
妻の考えていることが理解できず、というか、妻を信用できずにいる男です。

その彼は、次から次へと浮気をしていきます。
そんなある日、妻は夫と口を利かなくなります。
それから11年、一度も。
でも、別れるわけでもなく、一緒に暮らし、男は相変わらず浮気をし続けます。

そして、ある日、ついに男は妻に話しかけます。
それに自然に答える妻。

私は、この男が何をしたいのか、まったくわからなかった。
女性にもてる理由もまるでわからず。
でも、あくまでも、その男目線で話が進んでいくので、
客観的に見た時、彼がどのような行動を起こしているのかは、わかりません。
もしかしたら、他の人が見た彼の印象は、実はすこぶるいいのかもしれないですし。
でも、この作品は、彼自身の言葉だけで語られているので、
彼がどんな人なのか、また実際のところ、何が起きているのか、
客観的にはわからないのです。

しかし、それは、彼自身が自分のことをそこまで理解しきれていない、
ということにもなるのかな、と思ったら、彼への見方が少し変わりましたが。

まるで自分の頭の中に思い浮かんだ言葉が、
そのまま文字に起こされているような感じの本でした。
文章の書き方も独特でしたし。

でも、人の心というものは、そういうものなのかもしれませんね。
思いつきで、コロコロ変わっていくものなのかな、と。
たしかに、自分の頭の中で考えが変わっていって、苦しい時ってありますもんね。
また、真実が何なのかわからなくなることもありますよね。

この本は、読む人によって、とらえ方がまったく異なるものなのかもしれません。

私は、彼の奥さま目線の本を読んでみたくなりました。
彼を通して見る奥さまには、
彼の主観というベールがかかっていて、はっきり見えないので。 

磯崎さん、次作にどうでしょう?

yukikotajima 10:35 am