『ミステリ・トランスミッター 謎解きはメッセージの中に』
2024年11月20日
今や人に何かを伝える時、直接会えない場合はスマホを使って伝えますよね。
例えば「遅刻」を伝える際、
仕事相手なら電話で
カジュアルな関係ならLINEスタンプを送って
遅れることを伝えるかもしれません。
でもスマホが無い時はどうしますか?
伝えたいことがある。
でもスマホは使えない。
さて、どうやって伝えましょう。
今日ご紹介する本は、
さまざまな方法で人に伝えようとする人たちが出てくる短編集です。
『ミステリ・トランスミッター 謎解きはメッセージの中に』
斜線堂有紀 (しゃせんどう・ゆうき)
双葉社
いま、もっとも注目されるミステリ作家による短編集です。
5つのお話が収録されているのですが、どれもそれぞれ面白く、
感覚的には単行本を5冊読んだくらいの満足感がありました。
とは言えページ数は決して多いわけではありませんので、
時間的にはさらっと読めます。
ですが、どのお話もすぐに引き込まれ、一気読みの面白さです。
✳︎
5つのお話のうち、特にスピード感があってドキドキしながら読んだのは、
二つ目の「妹の夫」です。
宇宙をワープして遠くまでいけるようになった未来のお話です。
主人公は、ワープを使って宇宙を移動する初のパイロットに選ばれます。
でもそうなると、最愛の妻とはもう会えなくなります。
と言うのも彼が地球に戻ってくるころには、
時代がだいぶ先に進んでしまっているからです。
そこで、家にカメラを設置し、妻の様子が見られるようにします。
妻も賛成し、カメラ越しとは言え、
お互いの存在を感じられるようにしたのです。
そんなある日、妻が妹の夫に殺される映像を目にしてしまいます。
このことを地球に伝えなければ、と思ったものの、
モニターに現れたのはフランス人の男性。
言葉が通じなーい!
その上まもなくワープの時間が迫っています。
ワープをすれば次に連絡を取り合うときには、
地球ではかなりの時間が経ってしまいます。
時間もなーい!
果たして、彼はどうやって妻が殺されたことを伝えるのでしょう。
このお話は終始ドキドキしっぱなしでした。
また、リズミカルな文章で、最後も歯切れ良く、
いつか機会があれば朗読してみたいと思ったほどです。
✳︎
他には、1960年代のニューヨークのギャングの物語もあります。
ある日、主人公のギャングの危険を知らせる声がジュークボックスから聞こえます。
味方だという、その声の言うことを信じていいのか。
そもそもいったい誰がなんの目的でこんなことをしているのか。
こちらも面白かった!
*
最後のお話もひきこまれました。
ややウザめキャラの日本人が出てくるのですが、
彼の発言の間が絶妙なのです。
文字だけの文章から、会話の間までちゃんと伝わってくるのです。
その間が生み出す面白さがありました。
どのお話も頭の中に映像が浮かびやすく、
まるで目の前で起こっているかのような臨場感がありました。
本を読んだ後、著者のプロフィールを見たら
「朗読劇の脚本も手がける」とあり、納得!
だから声に出して読みたくもなるし、間も絶妙なのかと。
この本は短編集ですので、
忙しくて本を読む時間があまり取れないという方にもオススメです。
また、短編とは言え満足度は高いです!
あなたも秋の夜長に少しずつ読んでみませんか。