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『ショートケーキ。』

2024年10月30日

暑さもようやくおさまり、秋らしい気候になってきました。

秋は、食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋など、
様々な楽しみ方がありますが、私にとってはこれも欠かせません。

読書の秋。

それに今は「読書週間」ですし。
読書週間は、10月27日〜11月9日の文化の日を中心にした2週間です。
終戦まもない1947年に
「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」という決意のもと始まり、
今年で78回目です。

そして、毎年楽しみにしているのが、
読書週間にあわせて発表される標語です。
今年の標語はこちら。

「この一行に逢いにきた」

わかるわー!この感覚。
私も読書の一番好きなところはこれかもしれません。
ストーリーの面白さはもちろんですが、
ハッとさせられる一行に出会える喜びを味わいたくて本を読んでいるのかも。

普段本はあまり読まないという方も、
読書週間に何か一冊、本を読んでみませんか。
モヤモヤしたあなたの心を救ってくれる一行に出逢えるかもしれませんよ。

でも難しい本は無理だし、高い本も買えない。
それに本を読む時間もない。

という声が聞こえてきたような…。

そんな方は、文庫の短編集はいかがでしょう?

文庫ならお求めやすいですし、
短いお話ならわずかな時間でも読めます。

今日ご紹介する一冊は普段あまり読書をしないという方にもオススメです。
テーマも「ショートケーキ」ですので身近ですし。
あ、でも読んだ後は、きっとショートケーキが食べたくなるので、
本代に加えてケーキ代もかかってしまうかもしれませんが。(笑)

『ショートケーキ。』
坂木司
文春文庫

坂木さんは「和菓子のアン」シリーズでおなじみの作家さんです。
なんとシリーズの累計は100万部を突破しているそうです。

他にはドラマ化もされた『女子的生活』などもあります。
私、この本、好きです。

◎田島の紹介は コチラ

さて、『ショートケーキ。』は、
ショートケーキがテーマの連作短編集です。
5つのお話が収録されており、お話ごとに主人公が異なります。
そして、一冊を通して登場人物がゆるやかに繋がっています。

まず、駅ビルの中にあるケーキ屋さんにやってくるお客さんの話から始まり、
次は、そのケーキ屋さんで働く大学生、
そして、その大学生を見守る先輩スタッフへと、
主人公が変わりながら物語が進んでいきます。

そして、どの物語にも「ショートケーキ」が出てきます。

同じケーキ屋さんの描写でも
お客さん、スタッフ、さらに別のスタッフと
視点が変わることで、見え方や感じ方も変わってくるもので、
誰かひとりではなく、そこにいるみんなの心の中をのぞける面白さがありました。

また、ひとりひとりのケーキへの思いも良くて、
例えば、駅ビルのケーキ屋さんの先輩スタッフは、
「駅ビルで『売り切れ』はやりたくない」と言います。

「いろんなことに疲れて帰ってきて、
甘いものでも食べなきゃやってらんないってときに、
『売り切れ』ってなってたら、絶望しそうだから」と。

なんて素敵な先輩!
きっとこの先輩スタッフさんは疲れた人の心を何人も救ってきたのだろうな。

いつものお菓子ではなく、ケーキを食べたい。ケーキで満たされたい!
という日、私にもあります。

また、ケーキは自分で食べるために買うこともあれば、
誕生日のお祝いなど、人のために買うこともあります。
そこにはその人のことを思う気持ちがもれなくついてきます。

ショートケーキを軸に紡がれる人々の物語は、
それこそ美味しいショートケーキを食べた時のような満足感がありました。

また、今年の読書週間の標語
「この一行に逢いにきた」と思えるような一行との出逢いもありました。
でもそれがどんな言葉だったかは、あえて言わないことにします。

ぜひあなたの自身の「一行」を見つけてみてください。

そういえば、スポンジのショートケーキって、日本独自のケーキなんですって。

yukikotajima 12:10 pm

『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』

2024年10月23日

あなたには「推し」はいますか?

人だけでなく、音楽、本、映画などの作品や、
スポーツ、釣り、旅行などの趣味など、
誰にでも「好き」なものはあると思います。

もし「その推しの魅力をぜひ語って!」と言われたら、
あなたはどのように表現しますか?

やばい。
まじでやばい。
ほんとやばいんだって!

なんて表現になってませんか?(笑)

まあ、本当に好きなんだろうなあというのは伝わりますが、
「やばい」以外の言葉も使えたら、推しの魅力がより伝わるはずです。

自分の好きなものへの愛は、
自分の言葉で表現できたらいいと思いませんか?

今日ご紹介する本はこちら。

『「好き」を言語化する技術
推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』

三宅香帆
株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン

三宅さんは、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』でおなじみの書評家です。
この本は、7月に私もご紹介しました。

◎田島の紹介は コチラ

こちらは先日、「書店員が選ぶ ノンフィクション大賞 2024」の大賞に選ばれました。
おめでとうございます!

さて、今回の『「好き」を言語化する技術』は、
タイトル通り「推し語り」に役立つ文章術が学べる一冊です。

三宅さん自身、アイドルや宝塚の「推し活」をしているそうですよ。

推し語りと言っても、私、語彙力無いしなあ…と思ったあなた!
三宅さんによると、語彙力や文章力はいらないそうです。

必要なのは、自分の感想を言葉にする「ちょっとしたコツ」で、
そのコツさえつかむことができれば、
自分の言葉で推しの素晴らしさを語れるようになるそうです。

コツにはいくつかあるのですが、
そのうちの一つに「自分の感情を一番大切にする」があります。

私もこれは大事にしています。
私、映画は一人で見たい派なのですが、
理由は、人の感想を聞く前に自分が感じた思いを大事にしたいからです。

誰かと見に行って、ワイワイ感想を言い合うのも楽しいのだけど、
帰りの車の中でひとり、映画について思いめぐらす時間が好きです。

また、ラジオで紹介したり、SNSに感想を書いたりする場合は
他の人の感想はなるべく見ずに、自分の感想をまとめてから、
色々な人の感想を読むようにします。
そうしないと他の人の意見に引っ張られてしまいそうになるので。

三宅さんも「他人の言葉に、私たちはどうしても影響を受けてしまう」と言います。

でも、いざ自分の言葉で書こうと思ったら、
それこそ「やばい」しか出てこない、とか、
ありきたりな表現しか出てこない、なんて方もいるかもしれません。

では、どうしたら自分の言葉で表現できるようになるのか。

その答えを知ることができるのが、この一冊です。

三宅さんは、「自分の好きな作品を語ることは自分の人生を語ること」と言います。

この一文を読んだとき、「たしかに!」と思わず声が出てしまいました。

自分の好きなものについて語ることは、
その人が感じていることや好みなどを語ることでもあるわけで、
つまりは、その人自身ってことですものね。

となると、やはり自分の思いや言葉は大事にしたくないですか?

私自身、毎週ラジオ(プラスこのブログ)で本の紹介をしていますが、
これぞまさに「推し語り」です。

私は書評家ではないですが、
三宅さんのおっしゃっていることは、
私自身大切にしていることが多かったので、
読みながら何度も頭の中で「そうそう」と頷いていました。(笑)
と同時に新たな気付きもあり勉強になりました。
私ももっとわかりやすく伝えられるよう、工夫していこうと思いました。

普段からラジオにメッセージを送ったり、
SNSやブログに自分の思いを投稿したりしている方は、
この本を読んでみてください。

この本を読んだ後は、きっとあなたの表現も変わるはず。

yukikotajima 9:30 am

『いのちをまもる図鑑  最強のピンチ脱出マニュアル』

2024年10月16日

10月になってだいぶ過ごしやすくなりましたね。
外を走ったり、お散歩をしたりする方を見かけることも増えてきました。
連休中はピクニックを楽しんだ方もいるかしれません。

でも、外で過ごす際は気を付けなければいけないことが色々とあります。

例えば、これからの季節はクマに注意が必要ですし、
突然、スズメバチが飛んでくることもあるかもしれません。
また、涼しくなったとはいえ、熱中症の心配もあります。

危険は意外と身近にあるものです。
では、どうしたらその危険から身を守ることができるのでしょう。

今日は、あらゆる危険から「いのち」を守る方法が学べる図鑑をご紹介します。

『いのちをまもる図鑑
最強のピンチ脱出マニュアル』

監修:池上彰/今泉忠明/国崎信江/西竜一
文:滝乃みわこ
イラスト:五月女ケイ子/室木おすし/横山了一
【ダイヤモンド社】

7月の発売以来、話題になっていますので、
すでにお読みの方もいらっしゃるかもしれません。

この本は、ジャーナリストの池上彰さん中心に、各分野の専門家が監修した、
あらゆる危険から「いのちを守る」方法が紹介された一冊です。

図鑑とありますが、ほぼ漫画です。
漫画や楽しいイラストで目で見て理解できるようになっていますし、
漢字にはフリガナもふってありますので、
お子さんでも楽しみながら読むことができます。
というか、どちらかというとお子さん向けです。

池上さんは、いのちを守るのは「正しい知識」と言います。
また、知識をアップデートすることも大事だと。

今では間違っている昔の常識もありますので、
大人の皆さんもこの本を読んで
最新の知識に上書きしていただけたらと思います。

たとえば、昔は鼻血が出たら上を向くといいと言われていましたが、
それだと鼻血が喉に流れるのでNGなんですって。知ってましたか?

さて、身の回りの危険といっても色々とありますが、
この本は、危険生物、自然・災害、ケガ・事故、犯罪、そして身の回り
の危険からいのちを守る方法が全部で76個紹介されています。

例えば、危険生物からいのちを守る方法では、
「クマが出た」「スズメバチが飛んできた」時の対処法がのっています。

ちなみに、自然界では「異世界に転生した気分で過ごす」のがいいのだとか。
くわしくはこの本を読んでいただきたいのですが、
それくらい危険が多いということです。

他にも「公園で遊んでいるときにカミナリが迫ってきたらどうしたらいい?」
といった自然災害から、
ケガや事故、不審者や闇バイトなどの犯罪、
今どきのフェイクニュースやSNSに関するものまで、
様々な危険を回避する方法が載っています。

中には「好きな人にふられたらどうしたらいいの?」や
「授業中トイレに間に合わなかったときは?」など、
なかなか人には聞きづらいけど知りたい、といったものも。

この「身近な危険」の対処法は大人の私も大変勉強になりました。
対処法がずばっとわかりやすいのがいいなあと思いました。

わからないことは怖いことです。
でも、いざという時にその対処法を知っていたら安心です。
まずは「知ること」が大事です。
お子さんはもちろん、大人の皆さんもぜひ読んでみてください。

yukikotajima 12:57 pm

『フェイク・マッスル』

2024年10月9日

来週の月曜はスポーツの日です。
あなたは普段から何か運動はしていますか。

ジムでトレーニングをしている方もいるのでは?
ダイエット目的や運動不足解消のために通っている方もいれば、
中にはムキムキの筋肉にあこがれてトレーニングをしている方もいることでしょう。

でも筋肉ってなかなかつかないんですよね。
脂肪はあっという間につくのに!

さて、今日はそんな筋肉にまつわる小説をご紹介します。

『フェイク・マッスル』
日野瑛太郎(ひの・えいたろう)
講談社

こちらは第70回江戸川乱歩賞受賞作です。

江戸川乱歩賞は、ミステリ作家の登竜門と言われる
日本推理作家協会が主催する新人賞です。

人気作家の東野圭吾さんや池井戸潤さんも江戸川乱歩賞の出身です。

そして、記念すべき70回目の受賞作が
今日ご紹介する『フェイク・マッスル』です。

日野さんは去年まで3回連続で最終候補に残り、
今年ついに受賞となったそうです。

おめでとうございます!

***

受賞作の『フェイク・マッスル』は、ある男性の筋肉にまつわる物語です。

人気アイドルの颯太(そうた)が、
たった3ヵ月のトレーニング期間で
ボディービル大会の上位入賞を果たします。

ファンや芸能界から祝福の声が寄せられる一方で、
「あれは偽りの筋肉だ」と、ドーピングを指摘する声も上がります。

ところが颯太は疑惑を完全否定し、
自身がプロデュースしたトレーニングジムオープンさせます。
そして自分がパーソナルトレーニングをおこなうと言います。

それに目をつけた某週刊誌は、
新人記者である健太郎に、疑惑についての潜入取材を命じ、ジムへ入会させます。

健太郎は早速、颯太のパーソナルトレーニングを受けようとするのですが、
受講するには条件がありました。
それは「ベンチプレスの重量80キロを挙げられること」です。
もちろん初心者の健太郎にはできるわけはありません。
そこで、颯太のパーソナルを受けるために、
健太郎はまずはトレーニングを頑張ることにします。

物語は基本的には、記者の健太郎の視点で進んでいきます。

根が真面目な彼は、潜入取材とは言えトレーニングもちゃんとします。
いつからか、トレーニングをすることが普通になっていき、
社内でも「なんか変わったね!」と言われるようになります。

私自身、本を読みながら筋肉やトレーニングについて学べて、
そういう意味でも楽しめたのですが、
この本は、一人の若者が筋肉をつけるためにジムに通ってみた!
という話ではなく、ジム通いはあくまでも潜入取材で、
本来の目的は、人気アイドル颯太の筋肉が本物かどうかを調べることです。

ですから健太郎もただジムに行って体を鍛えているだけではありません。
自分なりに、様々な角度から颯太の筋肉について調べていきます。

果たして颯太の筋肉は本物なのか。

この続きは本を読んでお確かめください。

***

面白かったです!
テンポもよく、スピード感もあって、あっという間に読めました。

主人公の健太郎がなんかいいのです。
頼りなさげで、でも真面目で。
決して派手なキャラではないのですが、
応援したくなる若者でした。

江戸川乱歩賞の選考委員の湊かなえさんが、
「潜入取材シリーズとなれば喜んで追っていきたい」
とおっしゃっていたのですが、私も全く同じことを思いました。
健太郎による潜入取材シリーズ、希望します!

さて、今週末は3連休です。
連休最終日はスポーツの日ですし、
スポーツにまつわる小説を読んでみるのもいいのでは。

ちなみに『フェイク・マッスル』を読んだ後、
私は運動をしたくなりました。
私の場合、筋トレではなく走ることですが。

yukikotajima 10:38 am

『少女マクベス』

2024年10月2日

ヨリミチトソラでは、毎週水曜の18時半過ぎから
このブログとの連動で本の紹介をしています。

また、毎月第一週は明文堂書店とのコラボでお届けしています。
今日は10月の1週目ということで、
本を愛する高岡射水店 書籍担当 野口さんのオススメ本の紹介です。

『少女マクベス』
降田天
双葉社

著者の降田天(ふるた・てん)さんは、
執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)さんと
プロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)さんによる作家ユニットです。

これまで、第13回「このミステリーがすごい!」大賞や
第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞されています。

最新作『少女マクベス』は、演劇学校が舞台の学園ミステリです。
主人公は、女子生徒だけの演劇学校の3年生「さやか」です。

この学校には、脚本家や演出家などの作り手を目指す制作科と
演者を目指す俳優科があり、
さやかは制作科で劇作家を目指しています。

同学年には、同じく劇作家志望で天才と言われる「了」がいます。
了は生徒たちから神と崇められるほどでしたが、
ある日、自分の手がける演劇の上演中に舞台から転落死してしまいます。

この死は不幸な事故と片付けられたのですが、
事故の翌年に入学してきた新入生の「貴水(たかみ)」は、
みんなの前でこう宣言します。

「了の死の真相を調べに来ました」

そして、さやかは貴水に巻き込まれる形で、
了と関わりのあった生徒たちを調べていくことになるのですが、
それは、生徒たちの秘められた心の闇を暴いていくことでもありました。

果たして事故の真相とは。
また、それぞれの生徒たちが抱えているものとは。

その答えは、本を読んでご自身でお確かめください。

では、ここで明文堂書店 高岡射水店 書籍担当 野口さんのコメントをご紹介します。

才能とは持って生まれたものなのか、
はたまた努力の果てに辿り着くものなのか!?

一つの事件を巡って交差する証言と事実。
予想は裏切られました。
是非!今年最推しのミステリをお楽しみください!

***

私も裏切られました。(笑)

また、『少女マクベス』はミステリですが、
演劇を愛する少女たちの青春小説でもあります。

好きなことにまっすぐで、でも頑張っても思い通りにいかなくて、
挫折して、嫉妬して、落ち込んで、傷つけて、そして傷つけられて…。
野口さんもおっしゃっていますが、才能って何なんでしょうね。

一見華やかに見える少女たち一人一人が抱えているものが他人事とは思えず、
それぞれの気持ちが痛いほどわかりました。
本を読みながら心の中で何度「わかる」とつぶやいたことか。
ミステリとしての面白さはもちろんですが、
少女たちの青春小説としても読みごたえのある一冊でした。

ところで、本のタイトルにある「マクベス」は
シェイクスピアの四大悲劇のひとつですが、
マクベスと言えば、7月に紹介した『未必のマクベス』もマクベス絡みの作品でした。

またもやマクベス!と思いましたが(笑)、『少女マクベス』も面白かったです。

未必のほうは王が取り上げられていましたが、
こちらは魔女たちがクローズアップされています。

「ん?王?魔女?そもそもマクベスって何?」
という方でも楽しめますので、安心してお読みください。

公式サイトにはわかりやすいあらすじ漫画が載っていますので、
まずは予習がてらこちらから読んでみるのもいいかも。

◎公式サイトは コチラ

『少女マクベス』は、富山県内の明文堂書店全店
「ヨリミチトソラ ゆきれぽコーナー」にもあります。

◎明文堂書店のサイトは コチラ

yukikotajima 12:05 pm