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『アルプス席の母』

2024年7月10日

今日このあと15時半から夏の全国高校野球富山大会の開会式が行われます。
今年は43校40チームが出場し、13日(土)に1回戦が行われます。
そして27日(土)に決勝が行われる予定で、
優勝チームは8月7日(水)に開幕する夏の甲子園大会に出場します。
今年富山県代表として甲子園に出場するのは、どのチームになるでしょう。
高校球児たちはもちろん、親御さんたちにとっても大事な夏が始まりましたね。

今日ご紹介する本は、高校球児の母の物語です。

『アルプス席の母』
早見和真
小学館

高校野球の物語ですが、主人公は選手ではなく「母」です。

夫を事故で亡くした奈々子は、神奈川で看護師をしながら
中学生の航太郎と二人で暮らしています。

子どもの頃から野球が大好きな航太郎は、
地元のシニアリーグで活躍するほどに成長します。
高校は大阪の甲子園常連校で野球をしたいと思っていたのですが、
残念ながら声がかからなかったため、
声をかけてくれた大阪の別の高校に行くことにします。

彼が進学した高校は、女子高から共学になって6年で、野球部の歴史も同じです。
でも、最近はそこそこの結果を出しており、
監督は本気で甲子園出場を目指しています。
航太郎は、この監督から声をかけてもらったのでした。

さて、高校進学を機に航太郎は野球部の寮に入るのですが、
なんとそのタイミングで、母の奈々子も息子と共に大阪へと移り、
学校の近くで生活を始めます。

そして、奈々子は野球部の親たちの会「父母会」に入ることになるのですが、
この会がとんでもない場所だったのです。
厳しすぎる掟をはじめ、理不尽なことだらけです。

親たちは、子どもたちの野球の実力だけでしか他の親を見ておらず、
親自身には興味を示しません。
そして、みんなピリピリしています。
監督の態度も酷く、最悪の雰囲気です。

また、大阪弁にも、距離の近い大阪の人たちにも慣れないし、
息子とも全く会えないしで、奈々子はめげそうになりながらも、
たった2年だしがんばる!と自分に言い聞かせます。

そう、高校生活は3年間ですが、部活動は実質たった2年なのですよね。
そう考えると短い!

誰も知り合いのいない大阪での一人暮らしが始まった奈々子と
寮暮らしが始まった息子の航太郎。

果たして二人にはこの先どんな日々が待っているのでしょう。
無事甲子園には出場できるのでしょうか。
続きは、本を読んでお確かめください。

***

私は子どももいないし、高校野球のことも詳しくないけど、
そんな私でも夢中で読んでしまいました。

私も奈々子と同じように、泣いて、笑って、怒って、心配して、応援していました。
今じゃすっかり奈々子は私の友人で、
航太郎は私の甥っ子のような気持ちです。(笑)

子どものいない私でも楽しめましたが、
お子さんが野球をしているお母さんはもちろん、
野球以外の部活や習い事をサポートしている親御さんは、
この作品をより自分のこととして楽しめると思います。
共感したり、そこは違うなあと思ったりしながら。
日々いろいろ思うことがありながらも我慢している親御さんは、
この本の中に仲間を見つけられるかも。

また、野球をしている中高生もぜひ。
この本には思い通りにいかない球児たちも出てきます。
そんな彼らから学ぶこともきっとあると思います。

夏の高校野球シーズンの今の時期にぴったりの一冊です。
さっそく今週末にでも読んでみてください。

読んだ後はきっと甲子園の見え方が変わるはず。
私は球児たちはもちろん、親御さんたちのことも気になってしまいそうです。

親たちの甲子園も熱いっ!

yukikotajima 12:18 pm