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『不機嫌な姫とブルックナー団』

2024年5月15日

あなたはクラシック音楽はお好きですか。
好きな作曲家はいますか?

私は詳しくはないのですが、
ピアニストの清塚信也さんが監修、MCを務める
NHK Eテレの「クラシックTV」は好きで毎週見ています。

先日の放送ではマーラーが特集されていまして、
思わずこの本が頭に浮かびました。

『不機嫌な姫とブルックナー団』
高原英理(たかはら・えいり)
講談社文庫

この本にもマーラーが出てくるのです。
でも、メインで取り上げられているのは、
本のタイトルにもある「ブルックナー」ですが。

あなたは、ブルックナーをご存じですか?

ベートーヴェンやモーツァルトなどと比べると知名度は低めかもしれませんが、
ブルックナーは、19世紀のウィーンを代表する作曲家で、
今年は、生誕200年の「ブルックナーイヤー」なのです。

この本は、2016年に発売され、今年4月に文庫化されたのですが、
今年はブルックナーイヤーということもあり、よく売れているそうですよ。

*

タイトルの『不機嫌な姫とブルックナー団』を見ると、
いつの時代のお話だろう?と思ってしまいそうですが、現代の物語です。

主人公は、図書館で働く女性「ゆたき」です。
ある日、彼女は一人で大好きなブルックナーのコンサートに行き、帰ろうとしたところ、
「ブルックナー団」を名乗る3人の男性から声をかけられます。

このあと、ブルックナーについて話をしないかと。

彼らは「ブルックナーオタク」、通称「ブルオタ」なのでした。

ちなみにブルオタには男性が多いため、
女性のファンの話も聞いてみたいと、ゆたきは声をかけられたのでした。

ブルックナーは、偉大な作曲家でありながらも、なかなか世に認められず、
また、ひどく変わった、今で言うところの「イタい」人だったそうです。

気が小さくて自信が無く、常に迷い、
他人からの助言をすぐ信じて楽譜を書き換えていたため、
彼の交響曲にはいくつもの改訂版があります。

また、女性に全くモテなかったそうで、
ゆたきによると、ブルックナーは「非モテの元祖」だそうです。

実際、同時代の輝かしい作曲家たち、例えば、
リスト、ショパン、ヴァーグナー、ブラームス、シューマンなどと比べると、
ブルックナーは「ださい」のだとか。

そして、ブルオタたちは、自分たちのようなキモオタは、
輝かしい作曲家たちの世界からは締め出されているから、
自分たちには野暮なブルックナーがお似合いだと言います。

だからこそブルオタたちは、女性のファンであるゆたきに、
ブルックナーのどこか好きなのか聞いてみたいと思ったのでした。

結局、彼女は「ブルックナー団」のブルオタたちと
ブルックナー愛を語ることになるのですが、
どんなトークが繰り広げられるかは、ぜひ本を読んでお楽しみください。

さて、そんな中、ゆたきは、ブルックナー団のメンバーの一人が書いたという小説
「ブルックナー伝(未完)」をすすめられます。

『不機嫌な姫とブルックナー団』には、
その、ブルックナーが主人公の小説も載っていますので、
読者である私たちも読むことができます。

いったいそれはどんな小説なのか。
続きはご自身でお確かめください。

*

この本は、一冊丸ごとブルックナー愛にあふれていました。
何かを好きな人たちの話っていいものですね!

ブルックナーのここは残念だよね、と言いつつも、
根底には愛があるので、ただの悪口にいなっていないのがいいのです。

ブルックナーがお好きな方は間違いなく楽しめると思いますし、
今「推し」がいる人は、推しへの愛や向き合い方にきっと共感できるはずです。

一方、ブルックナーはじめ、クラシック音楽はよくわらかない、
という方でももちろん大丈夫です。

私も詳しくないですが、楽しく読めましたし、色々と勉強にもなりました。

何より文庫ですし、皆さんも気軽に読んでみてくださいね!

それから、作品の中の「ブルックナー伝(未完)」の完全なブルックナー伝が、
今年、『ブルックナー譚』として、中央公論新社から刊行されたそうですので、
良かったらあわせてお読みになってみるのもいいかも。

yukikotajima 12:46 pm