『喫茶おじさん』
2024年2月14日
ちょっと一息つきたいと思ったとき、あなたはどこにヨリミチしますか?
お洒落なカフェに行く方もいれば、
昔ながらの喫茶店で過ごしたいという方もいるのでは。
今日は、「純喫茶巡り」が趣味のおじさんの物語をご紹介します。
『喫茶おじさん』
原田 ひ香
小学館
去年の秋に発売されましたので、もうお読みになった方もいるのでは。
ヨリミチトソラにも私が紹介する前に、感想が複数届いています。
原田さんと言うと、ドラマ化された『三千円の使いかた』が人気ですが、
私は『口福のレシピ』や『まずはこれ食べて』など、食にまつわる小説も好きです。
↑本のタイトルをクリックしていただくと、私の本紹介が読めます。
新作は喫茶店巡りが趣味のおじさんのお話ですから、
きっと面白いに違いないと、読む前からニヤニヤしながら読み始めました。
主人公の純一郎は、大手ゼネコンを早期退職し、現在無職の57歳です。
妻は大学生の娘が暮らすアパートに行ってしまったため、別居中です。
最初は、コーヒーにやたら詳しいおじさんのお話かな?
と思って読み始めたのですが、そうではありませんでした。
純一郎は、仕事は頑張ってきたつもりなのですが、ぱっとしないまま退職し、
これといった趣味もありません。
ですが、たまたま入った喫茶店で、
「喫茶店、それも純喫茶巡り」を趣味にすることを突然決めます。
ゴルフやお酒などに比べたら出費もそう大きいものでもなさそうだしと。
そして、様々な喫茶店を巡っていきます。
どこにでもいそうな普通のおじさんが、うんちくを語るわけでもなく、
ただただ「おいしいなあ」と、コーヒーや喫茶店の食事を楽しんでいきます。
でも、物語はそれだけでは終わりません。
だって純一郎は、再就職先は決まっていないし、妻とも別居中なわけで、
色々と考えなければいけないことがあるのです。
そのうえ妻や友人などの近しい人たちからは、
毎回同じ言葉をかけられてしまいます。
「あなたは何もわかっていない」と。
また、純一郎は最近大きな失敗をしています。
退職金を使ってあることを始めたのですが、失敗に終わっているのです。
喫茶店でのほほんと楽しみながらも
純一郎は、自分の人生についても考えていくことになります。
純一郎はこの先どんな人生を送っていくことになるのか。
続きは本を読んでお確かめください。
ちなみに、きっと喫茶店に行きたくなると思いますので、
喫茶店でコーヒーでも飲みながら読むことをおすすめします。
今回もお腹が空いた一冊でした。
純一郎は、小難しいことは言わず、ただただ「おいしいなあ」と
喫茶店を楽しむ普通のおじさんなので、
自分自身を重ねながら読む「おじさん」も多いかもしれません。
正直なことを言うと、面倒なことから逃げがちな純一郎に
ちょっとイラっとした瞬間もあったのですが(笑)、
そんな時は、周りの女性たちからビシッと言われていて、
なんだかんだで憎めないおじさんでした。
今回も面白かったです。
家でひとりぼっちであれこれ考えているとマイナス思考になりそうですが、
居心地のいい場所で美味しいものを味わいながらだと、
穏やかな気持ちで自分と向き合えるものなのかも。
私も喫茶店巡りしてみたい。